研究課題 

 古くから、動植物の「形態」や「生態」に見られる類似と相違は、生物の由来を説く鍵となっていました。しかし、真の意味で、形態の変異や進化を引き起こす物質は、遺伝子です。現在に至る分子生物学の発展は、これまでの分類学、進化生物学、生態学に対する取り組みを大きく塗り替えようとしています。

 生態学は、生態系を構成する個体相互間の作用メカニズムから、地球全体の化学物質循環のダイナミックスまで、あつかう範囲の広い学問分野です。こうした生態学の諸問題に対して、生物集団内に蓄積された遺伝的多様性を、一つの量やマーカーとして、分子集団遺伝学を適用した分野が「分子生態学」です。

 分子生態学を専攻する当研究室では、DNAの多型現象などを積極的に活用し、生物集団の多様性と集団構造に関する課題と、社会的にも重要な種々の環境問題や遺伝資源の保護と保存などの研究課題に取り組んでいます。

 これまで研究対象とした種には、マダイ、カサゴ類、アジ類、深海性サメ類、アユ、ウグイ、トビムシ、クラゲなどがあります。



‘これまで’と‘これから’のテーマ
・魚類を中心とした生物集団の多様性と集団構造に関する研究
・mtDNAの構造と表現に基づく分子マーカー開発に関する研究
・魚類P450のバイオマーカーとしての有用性に関する研究




《カサゴを用いたPCR-RFLP法による実験の様子(一部抜粋)》
実験の様子@ 
実験の様子A 

 

      
(写真:近年の研究対象となっているカサゴ)

 また、2004年度からは、マグロ類の養殖研究の一環として、地中海におけるマグロ畜養場の視察と作業体験を実施しています。これは、研究室の卒業生が勤務する水産会社の協力によって実現しました。イタリアやスペインでの体験をもとに、“地中海における畜養マグロの現状に関するレポート”、“魚体の加工処理に伴う残滓とその有効利用に関するレポート”などが提出されています。