ラブカ胎児の動画

 2010年3月ラブカ雌の成熟個体が捕獲された.ラブカは深海に生息し,古代魚のクラドセラケに形態が似ているため,生きた化石とも言われる貴重な生物である.世界中の海から採集されているが,駿河湾では特に採集例が多く東海大学ではラブカについて多くの研究を行っている.
 本個体は,捕獲後に死亡したため研究試料として解剖を行った.本個体は妊娠しており,総排泄孔からは卵殻の破れた卵が産出されていた.子宮内にも卵殻に包まれ,発生直後と思われる胎児が繋がった卵が5つ確認できた.大きな外卵黄に繋がった胎児は,卵殻のなかで泳ぐ様に動いており,その様子をビデオにて撮影を行った.この映像は大変珍しいものである.子宮内の胎児の発達状態は異なっており,外鰓の発達が確認できたものから,ひも状のものまで様々であった.いずれの胎児もまだ親と形態が異なっており,ラブカと見分けるのは困難である.
 現在これら胎児のうち,大きくて元気なものを海洋生物学科の孵卵施設(DSFTL)に入れ,発達状況を観察している.卵は卵殻に包まれており,外部環境との接触が少ないため,しばらく生存する可能性があり,成長速度や発達過程について研究する予定である. また親魚に関しても,深海生物研究プロジェクトの一環として,生態の解明のための研究試料として使用する.
 我々は東海大学の海洋生物学科であるからこその研究を目指しています.
 

ラブカ Chlamydoselachus anguineus