■貝の分布
ところ変われば品変わると言われるように、世界のいろいろな地方でそこにすむ貝の種類はちがっています。
●世界の貝
- 世界の貝の分布をみると、インド洋から西太平洋にかけての海域、特にフィリピンを中心とした海域にもっとも貝が豊富です。大西洋は、カリブ海をのぞいて暖かい海流が浅い海域に流れていないために、貝の豊富なところが多くありません。しかし、世界のそれぞれの地域で特徴的な貝の分布をみることができます。
- ●インド−太平洋海域
- インド洋から西太平洋にかけての熱帯の海域では、サンゴ礁がよく発達していて、世界でもっとも多くの種類の貝がすんでいます。この海域の太平洋側にはミヒカリコオロギボラやオウムガイ、世界最大の大きさの貝オオシャコガイなどがすんでいます。また、イモガイやタカラガイなどの種類も豊富にいます。この海域の太平洋側とインド洋側では、すんでいる貝はだいたい同じですが、太平洋のワタナベボラとウミノサカエイモガイに対してインド洋ではそれに似たダイコクボラとベンガルイモガイが分布するように、多少ちがった種類もみられます。
- ●オーストラリア
- オーストラリアの近海には、中生代の生きている化石シンサンカクガイや世界最大の巻貝アラフラオオニシ、また美しい模様のニンギョウボラ類の多いところです。
- ●アフリカ西岸
- アフリカ西岸にはワダチザルガイやオパールキリガイがいます。南アフリカ近海には変わった形の笠貝が多いところで、トガリウノアシガイとチリレンゲガイはその例です。
- ●カリブ海
- カリブ海は、大西洋のサンゴ礁の発達した熱帯海域で、貝の種類も豊富です。ピンクガイやリュウグウボラ、カンムリボラ、大型のテンシノツバサガイなどがいます。
- ●北アメリカ西岸
- 北アメリカ西岸には、殻の内面の美しいクジャクアワビなどがいて、細工物にされています。また、ガンセキボラ類に美しい種が多く見られます。
- ●北極海
- 北極海から北太平洋やベーリング海にかけの冷たい海にはエゾバイ、ワダチバイ、エゾボラ類などが多くいます。
●日本の貝
- 日本は南北に細長い列島で、太平洋沿岸では南からの黒潮(暖流)が北上して房総半島沖に達し、北からの親潮(寒流)が南下して東北地方沿岸に達しています。日本海沿岸には黒潮の分流である対馬海流が北上しています。したがって、日本は暖流域には熱帯太平洋の貝が、寒流域には寒流域の貝が分布していて、全体として貝のさまざまな種類がみられます。
暖流域の貝は世界でもっとも種類の多い西太平洋の熱帯の貝で、種類も多く、特に沖縄や奄美のサンゴ礁にはシャコガイ類やホラガイがすんでいます。寒流域には、エゾバイ、エゾボラ、ツヅミボラ類や、アヤボラが多く分布しています。
日本およびその近海に特産の貝としては、アワビ類、、サザエ、サルアワビ、ヒタチオビ、ヒラサザエなどがあり、また最近日本からいなくなりつつある貝にはハイガイやアゲマキガイ、ヌマコダキガイなどがあります。
日本産を代表する貝として、リンボウガイ、オキナエビスガイ、チマキボラ、カセンガイ、ショウジョウガイなどがあります。
●駿河湾の貝
- 駿河湾は水深1,000mの等深線が湾奥にまで入り込んでいる特徴的な湾です。そのため、ラブカやタカアシガニなどの深海の生物が岸近くで採れることでも有名です。貝類でも同様で、深海の種類が比較的浅い海底にまで分布しています。
浅海の岩礁水深10〜30mのところはテングサ漁が行われていて、ギンタカハマ、ナツモモガイ、チグサガイ、クマノコガイ、ミカンレイシガイ、ベッコウイモ、ボサツガイが採れます。水深が20〜60mで行われるエビ刺網では、テングサ漁と同じ種類も多いのですが、トコブシ、エビスガイ、カコボラ、ハリサザエ、ボウシュウボラ、オニサザエ、チトセボラなども採れます。
これに対して、浅海の砂泥の海底水深20〜60mに仕掛けるヒラメ網では、シドロガイ、ツメタガイ、カズラガイ、ハナムシロガイ、ミクリガイ、ヤツシロガイ、アケガイ、トリガイなどとその他に二枚貝が多く採れます。
さらに深い水深60〜500mで行われるタカアシガニ漁では、オキナエビスガイ、ギンエビスガイ、ナシガタミヤシロガイ、イトグルマガイ、チマキボラ、ヤツシロガイカブトボラ、オオシラスナガイ、ムチツノガイなどの漸深海に分布する種類が採れます。これには、カブトアヤボラやスルガバイ、ヒメエゾボラモドキ、ケショウシラトリガイなどの寒流系の種類も含まれます。さらに深く水深1,000m以深になるとクルミガイ、シジミナリクルミガイ、オネダカソデガイ、ハリナデシコガイ、ハナシガイ、タカイソデガイなどの深海底に広く分布する小型の種になります。
●静岡県の陸産・淡水産の貝 (展示リスト)
- 貝は海ばかりではなく、二枚貝は淡水にも、巻貝はさらに陸にもすんでいます。静岡県では、河川にマシジミ、河口近くにヤマトシジミ、池沼にはドブガイなどの二枚貝がすみ、カワニナ、タニシ類やヒメモノアラガイ、サカマキガイなどの巻貝も広くみられます。最近ではジャンボタニシも各所にすみついています。
陸貝はカタツムリのことで、静岡県内にはミスジマイマイ、ヒラマイマイが広く分布し、ミカワマイマイとハコネマイマイなどはおもに山地に、ウスカワマイマイとオナジマイマイは平地にすみます。その他、細長いキセルガイ類やオカショウジガイ類など60種以上のカタツムリがいます。
● 展示貝類リスト
最終更新日:2001-11-12(月)
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