■静岡県の植物

 静岡県には、種子植物とシダ植物をあわせると、約4,000種類の植物が分布していて、その数は全国で一番です。このように多くの植物が分布しているのは、海抜0mの海岸から日本最高峰の富士山、そして3,000m級の山が連なる赤石山地(南アルプス)があるというように高度差があり、またそれぞれの地域にさまざまな環境があるからです。
 また、静岡県の植物の分布を見ると、「フォッサマグナ要素」、「ソハヤキ要素」、「伊勢湾周辺要素」など自然の歴史の中で形づくられてきた植物群が分布することも、植物相を豊かにしている理由のひとつです。
●照葉樹林
シイ林(三ヶ日町本坂峠)
 葉の表面に光沢のある常緑樹が茂る林です。静岡県での上限は約800mです。この林を構成するおもな植物は、シイ類とカシ類ですが、ヤブツバキ、タブノキ、ヤブニッケイ、ヤマモモなども林を構成する重要な木です。
●夏緑樹林
ブナ林(富士山)
 冬に落葉する落葉樹が茂る林で、照葉樹林の上部にあり、静岡県での上限は約1,500mです。この林を構成するおもな植物はブナ、ミズナラ、カエデ類で、秋の紅葉が美しい場所です。
●針葉樹林
シラビソ林(富士山)
 亜高山帯に茂る針葉樹の林で、夏緑樹林の上部にあり、静岡県での上限は約2,500mです。この林を構成するおもな植物はシラビソ、オオシラビソ、コメツガなどで、富士山にはりっぱなラマツ林があります。湿度が高いと枝からサルオガセ類が垂れ下り、林床の植物も豊富になります。
●高山植物
南アルプス千枚岳のお花畠
 富士山や南アルプスには高山植物が分布していて、とくに南アルプスにはりっぱなお花畠があります。静岡県には約350種の高山植物があり、そのうち約170種類が分布の南限種です。高山植物は氷河時代の生き残りの植物たちです。
●ソハヤキ要素
バイカアマチャ(佐久間町)
 第三紀から現在まで陸地だった九州、四国、紀伊半島から静岡県中西部の太平洋側の地域に限って分布する植物です。中国大陸西南部とも関係の深い植物が多くあります。バイカアマチャ、ギンバイソウ、クサヤツデ、チャボホトトギスなどは代表種です。
●フォッサマグナ要素
サンショウバラ(富士山)
 静岡県の東部と伊豆からフォッサマグナ地域に限って分布し、第四紀のはじめからはじまる火山活動によってできた陸地に侵入して、いろいろな種類に分かれたと考えられます。140種類ほど知られていて、サンショウバラ、マメザクラ、タテヤマギク、ソナレセンブリなどはその代表種です。
●美濃・三河要素
シラタマホシクサ(浜北市)
 伊勢湾周辺地域の三重県、岐阜県、愛知県、静岡県西部に限って分布する植物で、ソハヤキ地域に割り込むように分布しています。ミカワバイケンソウ、シラタマホシクサ、ホソバシャクナゲなどは代表種です。
●水湿地の植物
浮葉植物のオニバス(小笠町)
 湖沼や河川の水域に生活する水草と、湿地や湿原に生育する湿生植物で、これらの植物は湿潤な生活に適するように、体の形を変化させ、葉を水面に浮かべたり、突き出したり、沈んだりさせて、さまざまな生活のしかたを見せています。
●海岸の植物
ハマエンドウ(湖西市)
 海岸には特有の植物が分布しています。海岸の植物には根が深く、葉が厚く、表面に毛や光沢があるなど海岸のきびしい環境に耐えるしくみをもっているものが多くいます。岩石海岸と砂浜海岸では、生えている植物の種類にちがいがあります。
●特殊岩石の植物
シブカワツツジ(引佐町渋川)
 石灰岩や蛇紋岩が分布している地域には特殊な植物が分布します。石灰岩地にはイワツクバネウツギ、イチョウシダ、クモノスシダが見られ、蛇紋岩地にはシブカワツツジ、シブカワシロギク、シマジタムラソウなどが見られます。
●静岡県に固有の植物
アシタカツツジ(裾野市)
 静岡県にだけ見られる植物は、フォッサマグナ地域と伊勢湾周辺地域の植物のなかにあります。その代表は、シモダカンアオイ、フジダイゲキ、イズドコロ、アマギアマチャ、アシタカツツジ、オオサワトリカブト、イズカニコウモリ、アマギツツジ、シブカワツツジ、シブカワシロギクなどです。

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※このページは1996年10月に実施された特別展『静岡県の自然』の一部です。
最終更新日:1996-11-15(金)
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