■『海のはくぶつかん』1997年9月号

うでながひとで(あれこれ)

毎原 泰彦 

ウデナガヒトデ  現在当館では、冬場を中心に駿河湾に生息する深海生物の採集をおこなっています(Vol.21 No.2, Vol.22 No.3参照)。水深700〜1000mの深海からは現在までに、魚類ではアイビクニン、アカドンコ、節足動物ではブドウエビ、ミツトゲシンカイコシオリエビ、ヤドカリの仲間のエゾイバラガニ、ハリイバラガニ、イバラガニモドキ、イガグリガニモドキ、ヒラアシエゾイバラガニ等が採集されています。その他に長期飼育はできているものの、名前が分からない生物が少なくありません。たとえば刺胞動物のイソギンチャクの仲間や棘皮動物のヒトデ、ウニ、ナマコの仲間等です。これらの動物の中で、ヒトデの仲間は2種が長期飼育されています。1種はニチリンヒトデ、もう1種はキヒトデ科の仲間ではないかと思われましたが、はっきりしません。そこで、ヒトデ類の分類の専門家である魚津水族館の加野泰男博士に見てもらうことにしました。
 その結果、キヒトデ科ニッポンヒトデ属のウデナガヒトデということが分かりました。本種は黄色っぽい体色を呈し、輻長15〜20cmに達します。現在までに相模湾から知られています。駿河湾では主に水深700〜800mに生息しているようです。当館では水温2〜5℃の展示水槽で飼育されていますが、動きが少ないので、つい見おとされがちです。私たちはこれからも駿河湾の深海に住む生き物を、一種でも多く皆さんにご紹介したいと思います。


『海のはくぶつかん』Vol.27, No.5, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  まいはら やすひこ:学芸文化室水族課

最終更新日:1997-11-23(日)
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