■『海のはくぶつかん』1997年9月号

当館生まれの魚たちがみなさんをお出迎え

 鈴木 宏易

 本誌でも何度か紹介しましたように、当館では開館当初から海水魚の繁殖に力を入れてきました。一般に海水魚の卵は、淡水魚の卵に比べ小さく、その中でも比較的大きいマダイやヒラメなどは、高級魚として値段が高いため、研究が進み大量増殖の技術が確立されています。しかし、熱帯魚と呼ばれるきれいな小型の魚たちを繁殖させ、子どもを育てるのは非常に困難です。
 まず、親魚に産卵させるには、良い環境で体調良く飼育すること大切です。そして産まれてきた卵がふ化し、子魚を育てていくのですが、海水魚の繁殖で最も重要な問題が最初の餌です。ふ化直後の子魚は全長2〜3mmと小さく、その口に入る餌は100μm以下でなければなりません。現在は、シオミズツボワムシ(本誌Vol.20, No.2, p7参照)というプランクトンを培養し、その中の小さいものを与えています。
 その結果、1971年にカンモンハタが当館で初めて産卵して以来、現在までに186種の産卵が観察され、うち33種は、親と同じくらいまで育てることができました。
 この夏には、その成果の一部として玄関にクマノミの仲間やきれいなスズメダイなど600尾ほど入った水槽を設置しました。これからもこのような「当館生まれの魚たち」を増やし、自然保護、資源保護を率先して行っていこうと考えています。


『海のはくぶつかん』Vol.27, No.5, p.2 (所属・肩書は発行当時のもの)
  すずき ひろやす:学芸文化室水族課
最終更新日:1997-11-23(日)
〒424 静岡県清水市三保 2389
     東海大学社会教育センター
        インターネット活用委員会