■『海のはくぶつかん』1997年5月号

ひしだい(あれこれ)

毎原 泰彦 

ヒシダイ  皆さんは「ヒシダイ」という名前の魚を知っていますか?全長25cm程の魚で、本州中部以南の太平洋・インド洋・大西洋の水深50〜600mに広く分布しています。体高が体長とほぼ等しく、名前のとおり背鰭が上の頂点で腹鰭が下の頂点となっているひし形をしています。体は赤色をした大変美しい魚です。私たちは以前からこの魚をなんとか手にいれようと思っていましたが、なかなか手に入れることが出来ませんでした。
 7年程前遊漁船で釣れているという情報を入手し、船に便乗して漁場である“銭州”へ向かいました。現場に着くと勇んで竿を出しましたが、釣れるのは他の魚ばかりで、目的のヒシダイはなかなか釣れません。結局私たちは釣ることが出来ませんでしたが、同乗していた他の釣人が1尾釣り上げました。しかし、釣り上げられたヒシダイは急激な水圧の変化で目が大きく飛び出ていて、とても飼えるような状態ではありませんでした。そんな事があってから、この魚のことは私たちの頭の中から消え去っていました。昨年の初め、私たちは魚類交換のため下田海中水族館へ出かけました。その時のことです。なんと展示水槽の中に、数尾のヒシダイが泳いでいるではありませんか。私たちは入手先を聞いてみました。すると漁師さんが釣って持ってきてくれるが、希で数は非常に少ないとの返事です。幸い現在までに2尾いただくことができ、1尾を展示中です。


『海のはくぶつかん』Vol.27, No.3, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  まいはら やすひこ:学芸文化室水族課

最終更新日:1997-06-10(火)
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