■『海のはくぶつかん』1997年3月号

白いエゾイバラガニ(あれこれ)

岡 有作 

白いエゾイバラガニ  昨年の暮れに白いエゾイバラガニが採集され、当館に運び込まれました。駿河湾で漁をしている焼津・小川漁港の長兼丸のカニ篭に入ったのです。漁師さんから知らせを受けて飼育係が急いで小川の港まで駆けつけ頂いてきました。
 エゾイバラガニは赤いのが普通で、駿河湾では比較的たくさん採れます。このカニはタラバガニと同じようにヤドカリの仲間で、歩脚が3対の6本脚です。色素が無くなったアルビノのエゾイバラガニは非常に珍しく、今までに例が見あたらず、文献を調べてもこのような報告はありません。多分日本で初めてのことと思われます。700〜1000メートルの深海に棲むこのカニの仲間や魚類にはその暗い世界に適応して赤い種類が普通に見られます。ところが白いエゾイバラガニは、この漁を長年続けている長兼丸さんでも初めてのことだそうです。白い体では生存競争に不利で、その上一般にアルビノは弱いことが多く、大人の大きさにまでなることは一層珍しいことです。この珍しいカニはマスコミに数多く取り上げられましたので、新聞・雑誌やテレビでご覧になった方も多いと思います。
 新年の早々から、普通の色のエゾイバラガニと一緒の水槽で皆様の前にお目見えしています。それぞれで見てさほどではないカニの色が、並べて見比べると紅白のコントラストが美しいのです。機会があったらどうぞご覧になっていただきたいと思います。


『海のはくぶつかん』Vol.27, No.2, p.7(下) (所属・肩書は発行当時のもの)
  おか ゆうさく:学芸文化室水族課

最終更新日:1997-04-03(木)
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