■『海のはくぶつかん』1996年11月号

ソウシハギ(あれこれ)

毎原 泰彦 

ソウシハギ
 8月下旬一本の電話が博物館にかかってきました。清水港内に沢山の魚がいるので採りに来ないかというのです。この電話から、きっと風や波で流れ藻やゴミなどと一緒にマツダイやアミモンガラ等の子供が、港内に打ち寄せられたのだと思われました。そこで、さっそく行ってみることにしました。
 着くと大勢の人が海面を見ています。網で魚を一生懸命すくっている人やそれを見ている人たちです。私たちもその仲間に入れてもらうことにしました。私たちのねらいはマツダイやアミモンガラではなくソウシハギの子供です。以前採集した個体が今では全長50cm程の大きさになっていて、そろそろ次を考えなければならなくなっていたのです。みんな網を持ってソウシハギを探します。
 探してみると、10尾程が群をつくっています。しかし、水面下30〜50cmはあります。水中にそおっと網を入れねらいますが、相手はまるで遊んでいるかのように悠々と逃げて行きます。何度やっても同じです。そこで、深い所にいる全長20cm程の大型の個体はあきらめ、水面付近にいる全長10cm前後の個体をねらうことにしました。見つけても一度失敗すると、水面下に潜ってしまい採集できなくなります。それでも一時間程で、15尾のソウシハギの子供を採集することができました。今では餌もよく食べ、採集時に比べ体も一回り大きくなっています。


『海のはくぶつかん』Vol.26, No.6, p.7(下) (所属・肩書は発行当時のもの)
  まいはら やすひこ:学芸文化室水族課

最終更新日:1997-03-05(水)
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