■『海のはくぶつかん』1996年11月号

駿河湾で見られる甲殻類の展示

鈴木 宏易 

 前号でお話ししましたハナダイの展示のように、水族館ではたびたび「展示換え」を行います。数に限りのある水槽では、様々な海の生物やその生態の全てを見ていただけませんし、飼育技術も日々向上しているため、飼育担当者はいつも新しい展示を考えています。今回はハナダイの展示に続き新たに「駿河湾で見られる甲殻類の展示」を始めましたので展示の様子と、飼育生物をいくつかご紹介します。

明るい時
 エビやカニは甲殻類の代表的な仲間と言いえす。この仲間は、夜行性のものが多く、上の写真のように水槽の中でも、明るい開館中は岩かげにかくれていたり、砂の中にもぐってあまり動き回りません。しかし、閉館時間になり、照明が消えると下の写真のように餌をもとめていっせいに姿を現します。今年の夏に行った「夜の水族館」では、所狭しと動き回る様子が、来館者にも好評でした。

暗い時
 それでは、開館中はかくれていて、あまり姿を見せない種類も含め、展示している甲殻類をいくつかご紹介します。

トラフカラッパ
写真1.

 水深30〜100mほどの砂地の海底にすんでいる丸いカニです。缶切りのような変わった形のハサミを持ち、巻き貝を器用に割って食べます。昼間は砂の中に潜り、眼だけを出してじっとしています。これに似たメガネカラッパという種類も一緒に展示しています。

ヒシガニ
写真2.

 ゴツゴツとした石のようなカニです。水深30〜200mにすんでいます。昼間は砂の中にかくれていますが、夜になると折り曲げていた長いハサミ脚を伸ばし動き回っています。

アカイシガニ
写真3.

 ワタリガニと呼ばれるガザミ科のカニです。ガザミ科のカニは、一番後ろの脚の先が平べったく泳げるようになっています。アカイシガニは、水深10〜100mほどの砂地の海底にすみ、甲羅の大きさは8cmくらいになります。

ケスジヤドカリ
写真4.

 水深10m以深にすんでいる大型のヤドカリです。別名ヨコスジヤドカリと言い、眼のつけねに2本の白い線があります。自分の貝殻にヤドカリイソギンチャクをつけ、天敵のタコなどを近づけないようにしています。

ショウジンガニ
写真1.

 ヨットハーバーや港の岸壁・岩場の所でよく見られます。雄は雌よりも大きいハサミ脚を持ちます。清水港でもよく見ることができ、タモ網で簡単に採集することができます。

 今回ご紹介した以外にも、おなじみのイセエビなど約10種類の甲殻類を展示しており、これからは小型の種類もお見せできるように考えています。 夜の姿はなかなかお見せできませんが、彼らの生態をわかりやすく展示できるように工夫を重ねていきたいと思いますので、是非見にきてください。


『海のはくぶつかん』Vol.26, No.6, p.4〜5 (所属・肩書は発行当時のもの)
  すずき ひろやす:学芸文化室水族課

最終更新日:1996-12-12(木)
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     東海大学社会教育センター
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