サクラダイ(写真1.)
駿河湾では、水深20mほどでも見られますが30m以深でよく見ることができます。以前はオスのサクラダイのことをオウゴンサクラダイといって別の種類としていたことがありました。当館では開館以来サクラダイを展示しており、水槽環境が整った今では、産卵が見られるようになりました。残念ながら産卵は閉館後なので、みなさんに観察していただくことはできません。
キンギョハナダイ(写真2.)
本種もオス・メスが別種とされていたことがある種類です。駿河湾ではもっとも浅いところで観察されるハナダイで、水深10mほどでも観察することができます。当館の水槽でも活発に求愛産卵行動を行っています。始めに書いたサクラダイとちがって、開館時間内に求愛産卵行動をしているので、観察していただけることと思います。
ナガハナダイ(写真3.)
水深30m以深の転石地帯に少数の群れを作っています。ちょっとキンギョハナダイに似ていますが、もっと大きくなります。求愛行動をしているときのオスは、さらにあざやかな体色となります。時々水槽内でメスに求愛行動をしています。ひょっとすると夕方に産卵が見られるかもしれません。
シキシマハナダイ(写真4.)
駿河湾では水深70mほどの転石地帯に群れを作っています。かなり遊泳性の強い魚で、水槽内を活発に泳ぎ回っています。
アズマハナダイ(写真5.)
水深70mほどの砂地にすんでいます。あまり大きくならない種類で、尾鰭のつけねの赤い斑紋が特徴です。あまり泳ぎ回ることなく、水槽底や岩かげに身をひそめるようにしています。
スミツキハナダイ(写真6.)
水深90mほどの海底付近にすんでいます。かなりめずらしい魚で、私たちもあまり見ることはありませんし、生態写真もないようです。水槽では、きまった岩かげ付近であまり動き回らずにじっとしていることが多く、注意して観察しないと気づかないことが多いようです。
アカオビハナダイ(写真7.)
駿河湾では、水深50mほどで小さな群れを作っていますが、鹿児島湾ではもっと浅いところで多数観察できるようです。
最初にお話ししたように、駿河湾には約20種類のハナダイが見られます。これらのハナダイは、まだ生態が不明な種類も少なくありません。そしてまだまだ新しい種類が見つかるでしょう。
当館では、今まで紹介してきた種類を含めてサンゴ礁の魚たちに負けないくらいにきれいな駿河湾のハナダイたちを、みなさんに見ていただき、またさらに魚の観察を続けて少しずつでも新しい生態を明らかにしていきたいと思います
『海のはくぶつかん』Vol.26, No.5, p.4〜5 (所属・肩書は発行当時のもの)