■『海のはくぶつかん』1996年7月号
チャガラ(あれこれ)
野口 文隆
夏が近づくにつれて海では様々な魚の子供たちが姿を見せるようになります。子供たちは大きな生き物に食べられてしまわないように群れになって生活をしています。
当館の近くの海でも様々な種類の子供たちが群れになって泳いでいるのを見かけますが、その中でも特に目につくのがチャガラの子供たちです。
チャガラはハゼ科の魚で大きくなると全長9cm程になり、岩礁域の底層付近で小さな群れをつくって遊泳生活をしています。
早春の頃に貝殻などに卵を産みつけ、雄が孵化するまで守ります。通常、成魚を見かけることは少ないのですが、4〜5月にかけて岸壁から海をのぞくと、海面近くに全長2cm程に成長した子供たちの群れを見つけることが出来ます。うっすらと赤味がかった体色が特徴的で、群れが大きいと海面が赤一色に見える程になることもあります。
この頃は成魚の特徴の一つである黄色い5〜6本の横帯もはっきり現れておらず、群れで泳いでる様子は海の赤いメダカといった感じのとてもかわいい魚です。
今では黄色い横帯も現われ、成魚らしい姿になってきました。この魚達も夏がて水温が低くなるにつれ深場へと移動してしまい、姿を見ることはほとんどなくなってしまいます。春になって子供たちが海面を覆いつくすのを楽しみに待っています。
『海のはくぶつかん』Vol.26, No.4, p.6(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
のぐち ふみたか:学芸文化室水族課
最終更新日:1996-07-13(土)
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