■『海のはくぶつかん』1996年5月号

ミズウオ(あれこれ)

鈴木 宏易 

ミズウオ  2月24日、私の知人が博物館の近くでタコ釣りをしていたところ波打ち際で大きな魚の姿を見つけ、捕まえて私のところへ持ってきてくれました。
 持ち込まれた魚は、ミズウオという種類で、水深200〜1000mに生息しています。歯が鋭く、非常に貪欲で、口に入るものは何でも手当り次第食べてしまいます。そのため胃の中から、プラスチックのゴミなども時々出てきます。このように変なものを食べて具合いの悪くなったミズウオは、水面近くに浮いて、打ち上げられてしまいます。
 今回も何か変なものを食べたためか、腹部が異常に膨れていました。何を食べてしまったのだろうと思いながら、腹を開いたところ、そのミズウオの頭と同じくらいの大きさの、ミズウオの頭が見えました。表紙の写真は、その状態を再現したものです。“エッ”と思いながら、それを引っ張り出したところ、全長109cmのミズウオが出てきました。捕まえたミズウオが全長140cmでしたので、食べるにはムチャクチャな大きさです。その他にも、小魚やイカ、プラスチック性のゴミも出てきました。また、大きい方のミズウオの胃袋は、破けていました。
 深海での生活は、餌生物との遭遇率が低く、厳しい環境なのでしょう。腹ペコ状態の時に、獲物らしきものを見つけると、食らいつき、それが大きすぎて胃袋が破けても飲み込む。生きていくためにそんな性質を身につけてしまったようです。


『海のはくぶつかん』Vol.26, No.3, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  すずき ひろやす:学芸文化室水族課

最終更新日:1996-05-26(日)
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