■『海のはくぶつかん』1996年1月号

キカマンボウと一緒(あれこれ)

西 源二郎 

キカマンボウとアカククリ  キカマンボウの水槽は、メカニマル(機械生物)と本物の魚が一緒に展示されており、メクアリウム(機械水族館)の中でも人気の高い水槽です。この水槽の中で、本物の魚が、メカニマルを見て、どんな反応を示すのか、興味のあるところです。 一般に、この水槽に移された直後の魚は、キカマンボウが泳ぎだすと、驚いたように少し避ける態度を示したり、興味を引かれるのか、キカマンボウの後を追い掛けたりすることがあります。しかし、それも1週間程で、その後はほとんど関心を示すことはありません。
 昨年の11月の半ばに、アカククリの幼魚3尾を入れました。しりビレの先(下端)から、背ビレの先(上端)までが20cmほどで、名前の通りヒレの縁が赤く「くくられた」かわいいアカククリです。
 しかし、半月ほど経った頃から、このうちの一番小さいアカククリがキカマンボウの後ろに隠れていることが多くなりました。キカマンボウが泳ぐと、小さいアカククリもあわてて後を追うように泳いでいます。まるで親子のようで微笑ましい姿です。しかし、どうも、大きい2尾が小さいアカククリをいじめているようなのです。小さいアカククリにとっては重大な問題で、そのしりビレはほかの2尾につつかれて、短くなっています。キカマンボウは本物の魚のように、積極的に小さいアカククリを守ることはできませんが、なんとかいじめから守ってほしいと願っています。


『海のはくぶつかん』Vol.26, No.1, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  にし げんじろう:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-05-24(金)
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