■『海のはくぶつかん』1995年9月号

不思議な落し物(あれこれ)

毎原 泰彦 

写真  6月23日、当館に清水警察所水上交番から、清水港の入口の海面で、非常に長い海藻のようなものを採集したが、海藻なのかそれとも別のものなのか教えて欲しいとの連絡がありました。早速水上交番へ出かけてみることにしました。
 それは非常に長い一本の鞭状のもので、枝はなく表面はツルツルしており、根と思われるものがわずかではありますがついています。一目見ただけでは海藻とは断定できず、持ち帰って調べてみることにしました。当館で計測したところ、全長は11m31cmもありました。少し切って調べたところ、海藻らしいということまでは分かりましたが、日本にはこのような形をしたこんなに長い海藻はいないようです。当館ではくわしいことがわからないので、東海大学海洋学部で海藻を専門とされている先生に調べてもらうことにしました。
 その結果、褐藻類に含まれる海藻で、コンブの仲間のツルモ(蔓藻)属の一種で、北大西洋に分布する種類であろうとの返事をいただきました。日本にも静かな内湾や入江に全長1m以上になるツルモが生息していますが、とてもこんな大きさにはなりません。
 それでは、なぜこのような海藻が清水港に漂っていたのでしょう。清水港には世界中からいろいろな種類の貨物船、漁船等が入港します。きっとその中の一隻が運んで来たのでしょう。それにしても人騒がせな不思議な落し物でした。


『海のはくぶつかん』Vol.25, No.5, p.7(下) (所属・肩書は発行当時のもの)
  まいはら やすひこ:学芸文化室水族課

最終更新日:1996-09-07(土)
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