■『海のはくぶつかん』1995年9月号

新しいメクアリウムのスタート

西 源二郎 

 今年は当館の開館25周年になります。これを記念して、2階展示室にある機械水族館(メクアリウム)を全面的に改装しました。
 改装では、今までのメクアリウムの単なる化粧直しに終わらないよう、機械生物の原点に戻って「NEW機械水族館」誕生を目指しました。
 工事は5月22日から始まり、約2カ月の工事で7月14日に完成しましたが、この間、一部のメカニマルを1階の講堂で仮設展示しました。


海洋開発から海との共生へ

 メクアリウムの開館当時は海洋開発への意欲が盛んな時代でもあり、展示テーマは「開発をすすめるために海の生物に学ぶ」という考え方でしたが、現在では、人類の生産活動が増加して地球環境にまで影響を及ぼすようになり、海を含めた地球との共存をはからなければならない時代になりました。そこで地球、特に「海との共存のために海の生物に学ぶ」という発想が重要だと考え、これを新しいテーマとしました。

参加性の強い楽しい雰囲気

 メクアリウムは殆どが可動展示で、もともと参加性のある展示で構成されていましたが、さらに、プールで行われている泳ぐメカニマル解説時に見学者が操縦に参加出来るようにしたり、プレーコーナーで見学者が操縦できるメカニマルを1種類(ミツユビハチモンジ)増やしてさらに参加性の高い楽しい展示としました。

メカニマル・ラボ

 完成された一個の機械生物ではありませんが、運動のメカニズムだけを再現した原理モデルなどを使って、色々な海洋生物の運動機構を、解説するようにしました。これは、見学者の方が手に取って操作することもできます。ここをメカニマル・ラボと名付けました。ここでは、イカ類のジェット推進方法、クラゲの遊泳方法、カシパン類の移動方法(棘による移動)などを、図鑑やスケッチなどの補助解説資料も利用して対話しながら、個別に説明するようにしています。

暗い深海のイメージから明るい空間へ

 以前のメクアリウムは天井や壁面が深海をイメージした濃い青色で、暗い展示室となっていました。前室のマリンサイエンスホールは1986年の改装で明るい展示室となっているので、今回の改装では、メクアリウムも天井や壁面を淡い色調にし、照明も増やして明るい雰囲気の空間とし、両室の違和感をなくすようにしました。

新しい機械生物の登場(2種類)

 ミツメムレツクリの後継機として、最新の電子工学の成果である人工知能を取り入れた制御型メカニマルを作りました。このメカニマルの名前を皆様から募集したところ、あしが8本であることにちなんで、ヤツアシカンガエビと名付けられました。
 もう1種類の新しいメカニマルは、巨大な胸ビレをはばたくようにして泳ぐオニイトマキエイ(マンタ)をモデルにしたハバタキマンタで、プールに展示し、インストラクターによって操縦解説しています。
 なお、新しいメカニマルについては次号で詳しくご紹介します。

色々な試み

 ベニシオマネキやフナムシなどメカニマルのモデルとなった6種類の動物の新たな飼育、CGを利用して動物とメカニマルの関連を分かりやすく表現した解説VTRの導入、FM放送を利用した新たな解説の開始、3Dハイビジョンの新しいソフト「マリンファンタジア・イン・オキナワ」の公開、海洋学部船舶工学科の協力による人が乗れる大型メカニマルの製作など、NEW機械水族館にふさわしい色々な試みをしました。


『海のはくぶつかん』Vol.25, No.5, p.6 (所属・肩書は発行当時のもの)
  にし げんじろう:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-05-24(金)
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