■『海のはくぶつかん』1995年5月号

みつとげしんかいこしおりえび(あれこれ)

毎原 泰彦 

写真  当館では数年来、海の表面水温が低下する冬場に深海生物の採集を行っています。これは深海の低水温と表面水温との温度差が最も小さくなる季節を選ぶことで、水温差による生物への影響をできるだけ少なくするためです。
 深海生物の採集では私たちが主対象としている魚類以外にも、数多くの背骨の無い無脊椎動物が採集されます。種数では無脊椎動物の方が圧倒的に多く、その種類も刺胞動物、軟体動物、節足動物、棘皮動物など多くの動物門に分かれています。
 今回ご紹介するのは節足動物の中のエビやカニと同じ仲間で、コシオリエビ科に含まれる種類です。コシオリエビの仲間は腹の部分が曲がっているのが特徴です。しかし、食用となる種がいないため、皆さんにはあまり馴染みが無いかも知れません。現在までの当館への搬入状況から推測すると、この種類は、駿河湾では水深700〜1000メートルに生息していることは分かりましたが、搬入個体数が少ないこともあって、生息場所等については、まだ分かっていません。
 本種も他のほとんどの深海性のエビ・カニ類と同じく、水槽内でも長期間飼育することができます。当館では水温2〜5℃に保たれた、水量50Lの水槽で昨年の冬に採集した個体が、1尾だけですが今も元気です。しかし、低水温のためか脱皮は確認されていません。今後、駿河湾の深海からのお客様を一種でも多く、皆さんにご覧頂きたいと考えています。


『海のはくぶつかん』Vol.25, No.3, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  まいはら やすひこ:学芸文化室水族課

最終更新日:1996-05-24(金)
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