このようにサメの種類によって卵の形や大きさなどがかなりちがっています。
当館で生まれた8種類の卵のうち、ナヌカザメ・ヤモリザメ・イモリザメ・ニホンヤモリザメ・トラザメは産卵からふ化まで確認することができています。
さて、それでは産卵された卵から子ザメがふ化するまでにいったいどのくらいの日数がかかると思いますか?種類や水温などによって多少違ってきますが、だいたい250〜380日、ほぼ1年間かかるのです。写真6〜10は当館で産卵されたヤモリザメの卵がふ化するまでを観察したものです。
写真6は産卵直後の卵です。
写真7は産卵後43日の卵です。全長約9mmの子ザメ(矢印)を卵内にみることができます。
写真8は産卵後83日の卵です。子ザメは全長約27mmになり、えらがはっきりと確認できます。
写真9は産卵後241日の卵です。子ザメは全長約10cmになり、親と同じ模様となっています。
写真10は産卵後310日目にふ化した子ザメといままで入っていた卵です。
ふ化した子ザメは全長約12cmで、腹部には卵のう(卵の黄身)がまだ少し付いています。それはふ化後22日たってようやくあとかたもなくなります。
しっかりとした卵のなかで成長して、ほとんど親と同じ形でふ化し、餌も親と同じものをすぐに食べはじめます。だから、ふ化後の飼育はそれほどむずかしいものではありません。
しかし、ふ化までの約1年という長期間、卵をよく観察していないと、卵の中で成長途中の子ザメが死んでしまうことがあります。そんな卵に気付かないでいるとくさってしまい、水槽にいっしょに入っている他の卵もだめになってしまうこともあります。むしろ、卵を1年間じょうずに飼育することのほうがむずかしいくらいです。
最近ではサメの卵の飼育を趣味にして、それをふ化するまで大切に育てている人もいるようです。先日も卵から育てたイヌザメを当館にいただいたばかりです。
みなさんも、約1年かけて、卵の中で子ザメが成長していく様子をじっくり観察してみませんか?
『海のはくぶつかん』Vol.25, No.1, p.4〜5 (所属・肩書は発行当時のもの)