■『海のはくぶつかん』1994年11月号

博物館はいかがでしたか?
− 観覧者調査を実施して −

西 源二郎 

 私たちは、博物館が常に魅力ある存在であるようにと考えながら、展示動物を検討したり、新しい展示ストーリーを考えたりしています。しかし、実際に博物館を見ておられる観覧者の実態がどうであるのかを知らないと、展示する側の独りよがりになってしまう危険があります。そこで、どのような人たちが博物館に来て、どう評価しておられるか、観覧者の実態を知るために、毎年夏休みにアンケート調査をしています。今回はその一端をお知らせします。
 調査は、今年の8月22日(月)、23日(火)に行い、2日間の総入館者数2779人に対して、アンケートに回答して下さった方は581人になりました。
表1.
その内わけを見てみると、小学生24.2%、中学生6.6%、高校生3.1%、大学生5.0%で、これらの合計は38.9%です。残りはほとんどがいわゆる大人で、その内主婦が最も多く21.2%となっています。

Q.どこから来ましたか
表2.
 地元の清水市からは4.9%、その隣の静岡市からは7.7%で意外と少なく、これ以外の静岡県内からは38.3%です。東京、神奈川、千葉、埼玉の関東地区は21.9%、愛知、岐阜、三重の中部地区は15.6%、これ以外の県外は11.6%となっています。

Q.だれと来ましたか
表3.
 全体でみると家族と来た人が最も多く72.0%、次に友人・知人と来た人が16.8%、団体で来た人が9.1%となっています。これを先ほどの住所別に見てみても、家族と来た人が圧倒的に多い傾向は変わりませんが、静岡県外になると団体で来る人が多くなり、知人・友人と来る人を上回るところもあります。

Q.何回目ですか
表4.
 全体では初めての人が45.1%となっており、半数以上の人がリピーター(何回も来館する人)ということになります。その内、2回目が27.9%、3回目が12.7%と回数が増すにしたがって減ってきますが、10回目以上の人も2.3%とわずかですがいました。

Q.博物館の展示はどうですか
表5.
 これは私たちの最も気になる質問です。5段階に分けてきいてみました。全体では非常に良かったと答えた人が34.7%、良かったと答えた人が54.2%で、ほぼ9割の人が肯定的に評価して下さっているのでほっとしました。しかし、非常に良くないと答えた人もわずかながらあったので、気を付けねばならないと思います。
 見学の評価を住所と組み合わせて見てみると、非常に良かったと答えた人の割合は静岡県内より県外の人の方が高い傾向があり、その他の県外では46.8%になっています。
表6.
 同じく、見学の評価を観覧時間と組み合わせて見てみると、非常に良かったと答えた人の割合は、観覧時間が15-30分のグループでは23.6%だったのが、30-45分では28.6%、45-60分では30.3%と観覧時間が延びるにしたがって高くなり、2時間以上のグループでは54.8%と5割を超えています。時間をかけて見ている人の評価が高いのは、展示する側にとっては、うれしい結果です。

昔との比較
 今回と同じ様な観覧者調査は1979年から行っていて、海のはくぶつかん16巻2号には1981年の調査結果が紹介されています。それと比較してみますと、住所では静岡県内の割合が1981年では41.9%だったのが、今回では50.9%と増加しています。来館回数は、初めての人が1981年では59.0%だったのが、今回では45.1%とかなり減少しています。初めて来た人の割合を住所と組合せて見た結果でも、清水・静岡地区では18.2%から17.6%、その他の静岡県内では38.8%から29.0%、静岡県外では77.1%から64.3%といずれのグループにおいても今回の調査の方が減少しており、逆に2回以上来館したリピーターが増加しているということになります。
 来館の同伴者は、1981年の調査では家族と来た人が51.7%、友人・知人と来た人が12.0%だったのが、今回の調査では、それぞれ72.0%、16.8%と増加しており、その分だけ団体で来た人が23.7%から9.1%と減少しています。

まとめ
 今回の調査を1981年の調査と比べて見ると、県外から団体で来る人の割合が減少し、県内から家族づれで来る人の割合が増えています。そして、これらの人の多くは以前にも来館したことのあるリピーターであることがわかりました。
 博物館に対する評価は、全体的に見ると9割近くの人が肯定的に評価して下さっていますが、地区別に見ると県内より県外の人の評価が高く、清水・静岡などリピーターの多い地区の評価が相対的に低いという残念な結果がでました。
 この様な結果を参考にしながら、これからの活動を考えていきたいと思っています。


『海のはくぶつかん』Vol.24, No.6, p.2〜3 (所属・肩書は発行当時のもの)
  にし げんじろう:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-09-03(火)
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