■『海のはくぶつかん』1994年9月号

星砂の正体(あれこれ)

柴 正博 

電子顕微鏡写真  沖縄の海岸の白い砂を手にとってみると、サンゴや貝殻、石灰藻やコケ虫の破片にまじって、星砂やゼニイシとよばれるものが含まれています。
 おみやげ屋では、星砂は小さなガラスビンに入れられて、幸福をまねく砂としてよく売られています。星砂は、沖縄の砂浜ではどこでもみられますが、有名なところといえば竹富島の「星砂の浜」や与那国島の海岸です。
 星砂の正体は、実はバキロジプシナという有孔虫の殻です。有孔虫とは、アメーバに近いもっとも原始的な動物(原生動物)の仲間のひとつで、海水中に浮遊するものと、海底で生活するものがあります。有孔虫の大きさは普通直径が1ミリ以下ですが、星砂のように大型のものもあります。大型のものは、海底で生活している種類に多くみられます。
 顕微鏡などで星砂を拡大してみると、石灰質の白いきれいな殻の表面に、たくさんの小さな穴があいていることに気がつきます。この小さな穴から糸状の突起(偽足)を出して、有孔虫は動いたり、餌を捕らえています。殻をまっぷたつに切ると、中はたくさんの小さな室に分かれています。
 バキロジプシナは星型に数本のツノをもっていますが、同じ星型でもツノの多いカルカリナという有孔虫の種類もあります。また、ゼニイシと呼ばれる円盤状のものは、マーギノポラというやはり有孔虫の殻です。


『海のはくぶつかん』Vol.24, No.5, p.7(下) (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-09-09(月)
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