■『海のはくぶつかん』1994年9月号

サクラエビ漁で採れるシギウナギ(あれこれ)

塩原 美敞 

写真  駿河湾の湾奥部に当たる由比町や蒲原町にはこの地方独特のサクラエビ漁があります。サクラエビ漁は春と秋の2漁期の夜間に行われます。2隻の船が一組になってサクラエビを魚群探知機で探し、大きな群れに網を仕掛けてとるのです。網の中はサクラエビでいっぱいになり、船に上げられなくなることもしばしばです。そのサクラエビに混じって深海性の魚類がよく見られます。目が大きく体の真っ黒なハダカイワシのなかまやサメの中で最も小さいツラナガコビトザメなどいろいろな種類がとれます。
 体が細長くヘビのようにくねくねした魚が入っていることがあります。両顎が長く伸びていて口先が反り返っています。シギウナギです。大きいものは1mを越すほどになります。水深300〜2000mに棲む深海魚です。鳥のシギの口に似ているところから名前がついたのでしょう。シギウナギの胃を開いてみるとサクラエビが出てきます。多いものでは6〜7尾、少ないものでも2〜3尾が見られます。胃の中につまっている状態を見ると、決まって尾の方から食べられています。胃の中のサクラエビの数が少ないときは縦一列に、多いときは斜めに重なりあって整然と入っているのです。変わった食べ方をする魚ですね。これはきっとサクラエビのひげがじゃまになるので、長い口先にサクラエビのひげをからませて捕らえたあと、一匹づつ尾の方から呑込むことを身につけたのでしょう。


『海のはくぶつかん』Vol.24, No.5, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  しおばら よしひさ:学芸文化室水族課

最終更新日:1996-09-09(月)
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