■『海のはくぶつかん』1994年9月号

ヨーロッパを訪ねて
−パリ編−

佐藤 猛・日置 勝三 

 Vol.24, No.2では、デンマークの博物館についてご紹介しましたが、今回はその後訪れたパリについてご紹介します。
パリでは、当初予定していたトロカデロ広場にある水族館を訪れるつもりでいましたが、すでにその水族館は無くなっていて、クストーの博物館も閉鎖になっているという話を聞きました。パリには有名なルーブルなどの美術館や博物館は数多くあり、やはり芸術の街なのでしょうか…。
 ところが、他の場所に1館あるということを聞き入れ、そこを訪れることにしました。

『アフリカ・オセアニア博物館』
写真1.
 この博物館はパリ市街の東方、ヴァンセーヌの森の近くにあります(写真1)。館内に入ると正面にはインド風の大壁画があり、その周りにはアジアやアフリカの民俗資料が展示されていました。水族館は、この地下にありますが、何故このようなところに造られたのかは不明です。ただ、聞くところによると随分昔からあるということでした。
 この水族館には、淡水魚ばかりでなく海水魚も数多く展示されていて、そのなかにはオウムガイも飼育展示されています。内陸地にあるパリでは、維持管理の大変さがうかがえます。館内は、上階の博物館に比べかなりの人で混雑しており、やはり生き物(魚)は根強い人気の一つなのでしょう。
 水槽群が円形にならんでいる中央には地下2階分程の大きなくぼみがあり、そこには何故かワニが飼育されていました。まるでジャングルの一角を切り取って持ってきたような感じです。

『パリ自然史博物館』
写真1.
 市内にあるパリ植物園内の広い敷地には、熱帯植物園のほかにも動物園などの大きな建物が幾つかあります。そのなかの一つに自然史博物館があります。観光名所と違って、冬場という季節柄かこの公園を訪れる人はあまりいなく、時折、家族連れがのんびりと散歩しているくらいでした。
 自然史博物館は長方形のとても大きな建物で、ひとたび館内に入って驚かされました。ここは、フロアー全体が動物骨格の標本で占められており、まさに脊椎動物の全身骨格のオンパレードです(写真2)。もっと驚くことには、壁面ケースにはそれらの動物の解剖液浸標本がズラリと並べられていて、その中には人の赤ちゃんの解剖液浸もあります。正直なところあまり気持ちの良いものではありませんでした。
 その上の階には古生物化石が展示されていて、恐竜骨格も数多くあります。そのなかには、当館に隣接した自然史博物館にも展示してある全長27mのディプロドクスの骨格標本もありました。

 私たちは、今回初めてヨーロッパを訪れたわけですが、どこへ行っても日本人観光客の多さに驚かされます。世界的な不景気のなかで海外旅行にいそしむ我々日本人は、豊かな生活を持つ民族だとあらためて感じました。


『海のはくぶつかん』Vol.24, No.5, p.6 (所属・肩書は発行当時のもの)
  さとう たけし:学芸文化室博物課
  ひおき しょうぞう:学芸文化室水族課

最終更新日:1996-09-09(月)
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