■『海のはくぶつかん』1994年5月号

ブドウエビ(あれこれ)

毎原 泰彦 

写真  当館では、現在駿河湾に生息する深海生物の採集を行っています(本誌Vol.22,No.3)。その結果、現在までに魚類ではアカドンコ、アイビクニン、無脊椎動物ではタラバガニ科のイガグリガニモドキ、ヒラアシエゾイバラガニ等を水槽内に展示することができました。
 このように今まで深海生物を対象としたカゴ漁によって動物を入手しましたが、エビの仲間は少なく、ブドウエビだけが比較的数多く採集されています。本種は1986年に報告された新しい種で、タラバエビ科モロトゲエビ属に含まれる全長17〜18cmに達するやや大型のエビです。相模湾以南から東シナ海までの水深120〜700mに生息することが知られています。
 駿河湾での生息数は、採集される数から考えてもそれほど多いようには思えません。また採集される水深は700〜1000mで、採集場所もある程度限られているようです。生きたまま採集できる個体はとても少ないのですが、現在3個体を水槽で飼育しています。
 赤紫色と白色が混ざった体色をしており、生きている個体には艶があって大変美しいのですが、まだ長期飼育には成功していません。水温約3℃の水槽内では、あまり活発に動き回ることはありません。まだ餌には興味を示しませんが、なんとか長く飼育し、日頃目にする機会の無い深海に住むこの美しく珍しいエビを多くの方々に見ていただきたいと考えています。


『海のはくぶつかん』Vol.24, No.3, p.7(下) (所属・肩書は発行当時のもの)
  まいはら やすひこ:学芸文化室水族課

最終更新日:1996-11-05(火)
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