■『海のはくぶつかん』1994年5月号

アカカマスの餌付け(あれこれ)

鈴木 宏易 

写真  駿河湾では10〜11月頃に25cmくらいのアカカマスがよくとれます。体表に傷がつきやすく飼育の難しい魚です。それでもなんとか飼育したいと思い、由比の定置網漁に乗船してチャレンジすることになりました。
 採集した魚を博物館に運んで様子を見ていましたが、やはり傷が原因で死んでいく個体も少なくありませんでした。それでも採集してきたうちの3割程は傷が治り元気になりました。ところが、今度は餌を食べてくれません。
 カマス類は海で小魚を食べていますから、金魚など動きのある餌は食べますが、普段使っているアジの切身には見向きもしません。金魚だけでは栄養バランスが悪いので、何とか切身も食べさせようと、ピンセットで切身をはさんで揺らしたりもしてみましたが駄目です。
 そこで今までは体力の衰えを心配して時々金魚を与えていましたが、それを止めてみることにしました。カマスたちが口にできるのは切身だけです。食べず嫌いのカマスたちは段々痩せてきました。しかし、ここで金魚を与えると切身に餌付かなくなります。10日くらいたって切身を食べるものが現れてきました。みんな空腹に耐えきれなくなったようです。
 カマスたちも食べてみたら結構美味しかったのでしょう。今では食べ過ぎて太り気味なので、ダイエットをさせています。本当に手のかかる魚ですが、元気な姿を見ていると可愛く思えます。


『海のはくぶつかん』Vol.24, No.3, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  すずき ひろやす:学芸文化室水族課

最終更新日:1996-11-05(火)
〒424 静岡県清水市三保 2389
     東海大学社会教育センター
        インターネット活用委員会