■『海のはくぶつかん』1994年3月号

黄色くてもアカエイ(あれこれ)

大山 卓司 

写真  白化現象という言葉を知っていますか? 白いトラとか白蛇とか……。神の使いなどといわれる白い動物たちは、この白化現象が原因で白い姿で生まれてきたのです。
 白化現象は、先天的に体に色素を持たないという現象で、病気ではなく遺伝的な原因によって現れます。白化個体は一般に白子(アルビノ)と呼ばれるように全身が白く、瞳は血液の色が透けて見えるため赤く見えます。たとえば、白い体に赤い眼をしたカイウサギがその代表です。ほかにもいろいろな動物で白化現象が知られていますが、本当に真っ白なものからなんとなく色が薄いというものまで白化の程度はさまざまです。
 魚類では白化が不完全な場合が多いようで、昨年の11月2日に搬入されたアカエイの白化個体は全身が白というより黄色で、眼にも黒い色素を持った不完全な白子でした。完全な白子は生まれながらに全く色素を持っていないのですが、このアカエイのように、魚類にみられる不完全な白化現象は、色素を作る酵素の作用が異常に抑制されていることが原因なので、全く色素がないということではありません。
 展示している海洋水槽の中でもかなり目立ちますが、色は黄色でもアカエイはアカエイです。自分の色のことなど気にも止めずに、ごく普通にアカエイらしい生活を送っています。


『海のはくぶつかん』Vol.24, No.2, p.7(下) (所属・肩書は発行当時のもの)
  おおやま たくじ:学芸文化室水族課

最終更新日:1996-11-05(火)
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