『デンマーク水族館』
デンマーク水族館はコペンハーゲンの郊外にあり、近くのシャーロッテルンド宮殿跡には公立の水産と海浜の研究所もあります。
水族館内に入ると、入口近くにはこじんまりとしたミュージアムショップと、セルフサービスですが落ち着いた雰囲気のレストランがありました。その奥にある展示室では子供たちが楽しそうに水槽を見ていて、水槽越しの明りでメモをとっている子もいます。館内を走ったり騒いだりする、どこかの国の子とは対照的な光景です。
展示は入口側から淡水魚、そして海水魚へと続き、海水魚の水槽には北の海では有名なタラの仲間がたくさん入っているものもあります。別の水槽には、デンマークでただ一つ毒を持ったミシマオコゼの仲間(Trachinus draco)もいました。解説パネルには、魚の棲息場所や特徴などが子供たちでもわかりやすいように描かれていて、水槽の前に設置されている受話器をとると、詳しい解説を聞くこともできます。
一番奧の広いフロアーには、三方がガラス張りの大きな水槽(ランドスケープアクエリア)がありました。目のあたりが水面になっていて、下には魚、上には植物が茂っています。
地下にあるトイレに行くと、階段の途中に窓がありました。そこを覗くと機械室が見えるようになっていて、なかなかおもしろい工夫です。
『コペンハーゲン大学付属海洋生物学研究所』
コペンハーゲンより列車で1時間ほど北に上るとヘルシンガーという町があります。シェークスピアのハムレットの舞台となったクロンボー城でも有名なところです。また、港からは列車に乗ったままスウェーデンに行けるフェリーが出ていますが、土曜日の晩になると港に酔っぱらいが増えるというのです。なんと、スウェーデンは禁酒国なので、土曜になるとフェリーで国境を越え、お酒を飲みに来る人が多いからなのだそうです。
海洋生物学研究所はこの町にあって、訪れると研究所員が出迎えてくれました。ここでは、海洋におけるプランクトンやバクテリアの役割、そして魚の生理学などの基礎研究を行っていて、EC諸国のいろいろな研究者も研究に携っているということです。どの研究室を訪れても室内は整理されていて、研究員も快く応待してくれました。
ここには付属の水族館もあり、日によって子供たちに開放しています。タッチングプールと、その奥には浅い海から深い海へと水深ごとに水槽が並んでいて、デンマーク周辺の魚類が展示されています。また、深海に棲むきれいで大きなイソギンチャクの仲間が状態良く展示されていました。
『コペンハーゲン動物学博物館』
コペンハーゲン市内にあるこの博物館は、ほとんどが動物の模型や剥製とジオラマからなっていて、変った博物館の一つといえます。展示室はビルの5階だけですが、鳥や獣のほかに魚の剥製も展示されています。なかには凝った見せ方をしているものもあって、例えば分類の「飛ぶ」というところを見ると、鳥がいればトビウオもいます。「音」のところにはコウモリもいればイルカもいます。なかなか面白くてユニークな発想だと思いました。生態展示としてはただ一つ、本物のアリを飼った蟻塚がここにはありました。
実は、ここではもっと驚いたことがありました。1階のクロークは無人で、見学者は自分で勝手に衣類を掛け、バッグなどをそこに置いたまま見学に出かけてしまうのです。それほどデンマークは安全で人柄の良い国なのでしょう。ちょっと日本では考えられないことです。
ただ、実際にはデンマークでは人件費が高いから、という意味もあるらしく、レストランでもセルフサービスのところをよく見かけました。
私たちは宿泊先から市内への移動に鉄道を利用しましたが、鉄道の駅でも改札口らしきものがありません。単に切符を買って、自分でホームにあるレコーダでスタンプを押し、列車内で検札を受けるだけでした。首都コペンハーゲンの駅でも道路から直接ホームへと出入りできます。列車を降りるとそのまま道へ出てしまうというのも、これまた日本では考えられないことでした。
デンマークの人はとても親切で、どこへ行っても笑顔で応えてくれます。もう一度、行ってみたい国の一つとなりました。
『海のはくぶつかん』Vol.24, No.2, p.2〜3 (所属・肩書は発行当時のもの)