■『海のはくぶつかん』1994年1月号

モスクワの博物館を訪ねて

 佐藤 猛 

 ロシア共和国・モスクワ大学で行われた『東海大学と松前重義展』に、当館よりカクレクマノミなど数種の魚類とメカニマル(機械生物)を出展しました(本誌参照)。その開催期間中にモスクワの2つの博物館を視察することができましたので、ご紹介します。

『ロシア科学アカデミー古生物学研究所付属古生物博物館』
 モスクワ市内から車で20分ほど走った効外のプロフソユーズナヤ通りに、この博物館はあります。人通りもなく殺伐とした風景の中にポツンと煉瓦造り風の大きな建物があって、その入口にはロシア語で古生物学研究所付属古生物博物館と書かれています。館内に入ると、外とはうって変わって子供たちや家族連れでにぎわっていました。
 エントランス部はかなり暗く、天井から首長竜の骨格標本が吊り下がっています。展示室はその奧の階上で、ここは比較的明るい雰囲気です。ここでの写真撮影には料金が必要で、撮影料は地下鉄と同じ30ルーブルを払います。ロシアは物価が安く、日本円にするとわずか4円です。

 展示室はいくつかの部屋に分れており、古生物化石が中心となってガラスケース内に系統的に並べられています。その中には貝やサンゴの化石もあって、海産生物だけをとっても相当な点数です。そのほかにもマンモスや恐竜の骨格標本などがあり、その中には当館に隣接する自然史博物館でも展示しているタルボサウルスや大きなディプロドクスもありました。また、3メートル以上もあろうかと思われるサウロロフスの後肢の骨格も展示されていて、その時代を模した大壁画がこの館のスケールの大きさを表しています。古生物に関心があれば、一見の価値はある博物館でしょう。

『モスクワ大学付属地球科学博物館』
 モスクワにはあまり高い建物がないということで、北はオスタンキノテレビ塔、南はこのモスクワ大学がその代表と言われています。この博物館は、そのモスクワ大学構内の、それも最上階(31階)に近い24階〜28階までを占めているため、館内の窓からはモスクワ市内が一望に見渡せます。
 ここには、モスクワ周辺からロシア全域にわたる自然科学系の資料が展示されています。種類も地質から動植物まで多岐にわたり、実物のマンモスの頭骨も展示されています。その中には、無脊椎動物の液浸標本もあり、その数と保存性がすぐれているのに驚かされました。動植物の生態系の場所では、特徴のある地域のイラストとジオラマが並べてあり、地下1メートルほどの地質状態も展示されています。その出来映えとわかりやすい解説には感心させられます。

 また、ここは学生や子供たちの勉強の場となっていて、訪れたときも子供たちが熱心に見学をしていました。また、私たちが飛び込みで訪れたにもかかわらず、解説員がわざわざ出向いて館内を案内してくれました。
 何となくロシアの広大さをここで知らされたような感じでした。


『海のはくぶつかん』Vol.24, No.1, p.6 (所属・肩書は発行当時のもの)
  さとう たけし:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-11-05(火)
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