■『海のはくぶつかん』1993年9月号

ミズクラゲの採集(あれこれ)

大山 卓司 

写真  当館では、1986年からミズクラゲの展示を行っています。水槽内のミズクラゲは、変形したりして2〜3ヶ月で状態が悪くなってしまうことが多く、展示を続けるためには常に新しいクラゲを補充する必要があります。このため、ポリプと呼ばれるイソギンチャクのような形をした付着世代を状態よく保つことが大切になります。必要に応じてポリプに低温処理をすれば新しいクラゲを作りだすことができるからです。(本誌Vol.16,No.6)
 ところが、数年間展示を続けているうちに、水槽育ちのクラゲの形や動きが自然の物とは違うように思えてきました。いつも同じような餌ばかりで、栄養が偏ってしまったためでしょうか。そこで、ポリプも含めて全てを新しく入れ換えるために“野生のクラゲ”を採集することにしました。
 ミズクラゲの採集は、東京湾奥部で行いました。海に入ってクラゲをすくい採るのですが、水が濁っているためクラゲがどこにいるのか海の中ではわかりません。そこで、一人が陸の上からクラゲのいる場所を指示します。潮の流れに従って動いているクラゲたちは、ゴミと一緒になっていることも多く、そんな場所を指示しなければならないときは、本当に申し訳ない気持ちになります。
 こうして採集してきたクラゲから幼生を採取し、新しいポリプを得ることができました。この新しいポリプから生まれ出るクラゲたちがきれいに育ってくれるよう、大切にして行きたいと思います。


『海のはくぶつかん』Vol.23, No.5, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  おおやま たくじ:学芸文化室水族課

最終更新日:1997-03-05(水)
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