■『海のはくぶつかん』1993年7月号

三保の海でとれた小さなリュウグウノツカイ(あれこれ)

塩原 美敞 

写真  リュウグウノツカイは、姿・色彩が変わっていることやその大きさから、見つかるごとにちょっとした騒ぎになります。海洋科学博物館には、以前(Vol.20 No.6)紹介した大きなリュウグウノツカイが2個体展示されています。体長5m18cmと4m85cmもある大きな標本です。今回そのとなりに体長28.5cmの小さなリュウグウノツカイを展示しました。
 この小さなリュウグウノツカイは、1990年12月に三保半島の内海側の清水港内で発見され、当館へ運び込まれました。まだ生きていたので、水槽に入れて泳ぐ姿を観察しようとしました。しかし上手に泳げなかったので、少しかわいそうな気がしましたが、よい状態で残しておくため標本にすることにしました。体はとても細長く、全体が銀色をしています。グアニンという色素におおわれているためです。背鰭の最初の5本と尾鰭はとても長く伸びています。特に背鰭の1本は体の長さの約2倍もあり、途中に8個の赤い色素の集まったふくらみが見られます。また、腹鰭も完全な形で残っていてその先端はカギ状に曲がって、Jの字のようになっています。
 リュウグウノツカイは、体のつくりから見て力強く泳ぐのではなく、比較的深い海中をユラユラと漂いながら生活しているといわれています。そのためか、海が荒れると海岸に打ち上げられたりします。この小さなリュウグウノツカイが海の表面まで上がってきたのはどんな理由だったのでしょうか。


『海のはくぶつかん』Vol.23, No.4, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  しおばら よしひさ:学芸文化室水族課

最終更新日:1997-03-17(月)
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