■『海のはくぶつかん』1993年5月号

新しい展示「海の環境汚染」(あれこれ)

岡 有作 

写真  陸地は浸蝕の場、海洋は堆積の場と言われています。地球上に海ができて以来この作用が続いて今のような姿が作られてきたのです。地上に降った雨水が岩石を削り運んで海水の成分となり、再び海底に堆積します。生物が現れてからは更に生物の作り出す物もそれらに含まれるようになりました。生物が作り出す物質は、自然の中に取り込まれても問題がなく、分解し循環を繰り返してきたのです。
 ところが人類が今までに天然にはなかった分解されにくい物質を合成するようになるとその多くが海に蓄積されてきました。
 初めの頃は海の大きな収容力のおかげで実害にほとんど気がつかないでいましたが、次第に分解されにくい物質が海に蓄積されてくると有害な性質をあらわし始めました。無限と思いこんでいた海も、止まるところを知らない人類の活動でその包容力にも限度が見られるようになってきました。
 写真は、人喰い鮫として恐れられ、映画「ジョーズ」のモデルとなったホホジロザメです。マグロ漁の延縄にかかったもので、海中を漂うプラスチックの輪にはまり抜けられなくなったようです。ごく希な偶然の出来事のはずですが、同じような例が次々と見つかるようになりました。
 当館2Fマリンサイエンスホールでは、以前からの展示「地球の水は 660ml」と関連付けて、海洋汚染についての展示を始めました。このサメを引伸ばした写真パネルも見て頂けます。
(写真提供:東海大学助教授 田中 彰)


『海のはくぶつかん』Vol.23, No.3, p.7(下) (所属・肩書は発行当時のもの)
  おか ゆうさく:学芸文化室博物課

最終更新日:1997-03-17(月)
〒424 静岡県清水市三保 2389
     東海大学社会教育センター
        インターネット活用委員会