■『海のはくぶつかん』1993年5月号

タチウオの飼育(あれこれ)

塩原 美敞 

写真  食卓でおなじみの魚ですね、でも水槽の中で泳ぐ姿を見たことがあるという人は少ないと思います。日本の水族館のでタチウオを飼育しているのは2、3館しかありませんから当然のことですね。
 タチウオが水族館の常連にならないのは飼育がとても難しいからです。まず第一に体がとても傷つきやすいことがあげられます。アルミ箔を巻いたような体は物に触れただけで表面を覆っているグアニン色素がはがれおちて、ついには大きな傷になってしまいます。もう一つの大きな理由はエサを食べてくれないということです。
 当館ではこれまで何回もタチウオの飼育に挑戦してきました。結果は毎回あまり変わらず短期間の飼育に終わっていました。しかし昨年11月に採集したタチウオの中にエサを食べるものがいて、少し希望が出てきました。そこで、1月に採集したタチウオは、傷の治療を済ませたら強制的にエサを食べさせようということになりました。ピンセットでエサをはさみ、鋭い歯の間に押し込むのです。かなり強引な方法ですが、いやがるタチウオの口の中に無理やり押し込むと、飲み込んでいくものがいます。この様子からタチウオは、エサが口の中に一旦入ると飲み込む習性があるように見受けました。
 現在はエサを水槽になげこんだだけでとびついてくるタチウオもいます。まだ口先まで持っていかないと食べない甘えん坊もいます。これで少しタチウオが飼育できる感触をつかむことができました。


『海のはくぶつかん』Vol.23, No.3, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  しおばら よしひさ:学芸文化室水族課

最終更新日:1997-03-16(日)
〒424 静岡県清水市三保 2389
     東海大学社会教育センター
        インターネット活用委員会