■『海のはくぶつかん』1993年1月号

アオリイカの飼育(あれこれ)

大山 卓司 

アオリイカ写真  アオリイカは、日本の沿岸ではごく普通に見られるイカで、大きくなると外套長で40cmほどになります(イカの大きさは、腕の部分を含まない胴体の長さで表します)。地方によっては、その姿かたちからミズイカ、バショウイカなどと呼ばれています。
 毎年5月頃になると、アオリイカは産卵のために岸近くの浅いところへ集まってきます。そして、海底に生えている海藻や沈んでいる木の枝などに卵が5〜6個入った鞘状の卵嚢を産みつけます。産卵後1ヶ月ほど経つと体長1cmたらずで、一人前の姿をした稚イカが生まれ出てきます。やがて夏も終わる頃、5cmほどに成長したアオリイカの子供たちが、波の静かな入り江や港の中で群になって泳いでいるのを見かけるようになります。
 さて、アオリイカを飼育をする上で一番大変なのが餌付です。アオリイカは、生きた小魚などをとらえて餌としているので、死んだ魚や切身などはなかなか食べてくれません。しかも、十分に餌を食べられないと共喰いをしてしまいます。そこで、初めのうちは生きた金魚を与えてひとまず餌付かせます。そして、水槽になれてきた頃を見計らって、少しづつ小アジなど魚屋さんで売っている鮮魚に切り替えていくのです。こうして、飼育を始めて2ヶ月近く経った今では担当者の手元から餌を取って行くほどになりました。このまま順調に育てば、来年の夏頃には水槽の中で産卵をしてくれるのではないかと、楽しみにしています。


『海のはくぶつかん』Vol.23, No.1, p.7(上) (所属・肩書は発行当時のもの)
  おおやま たくじ:学芸文化室水族課

最終更新日:1997-04-19(土)
〒424 静岡県清水市三保 2389
     東海大学社会教育センター
        インターネット活用委員会