カリフォルニアの海にしかいないグルニオンは、毎年、春から夏に産卵期をむかえ、満月と新月の大潮の晩、砂浜にやってきて産卵します。砂の中の卵は、2週間以上も水のない砂の中で過ごし、その後の大潮で海水にふれると瞬時にふ化して、海へ帰って行きます。 東海大学海洋科学博物館で特別公開されるグルニオンのふ化実験会は、ロサンゼルス市立カブリロ海洋水族館がこの魚の産卵期に実施している人気のプログラムです。 卵の入ったコップに海水を注ぐと、まるでインスタントラーメンのように2分たらずで稚魚が誕生する「ふ化実験会」は、多くの来館者に衝撃と感動を与えました。昨年、東海大学海洋科学博物館の開館30周年を記念行事として、初めて国内で特別公開されたものです。実験会終了後、もう見られないのかとの問い合わせが殺到したことから、今年の産卵期にもう一度だけ、カブリロ海洋水族館に協力していただき卵の手配を行うことにしました。現地では今月11日が大潮にあたることからグルニオンの産卵の観察会が開催されます。当館では、この産卵日に合わせ現地に職員を派遣(3月10日〜15日まで)し、卵の採集を行うことにしています。 グルニオンは、日本沿岸には生息していないことから、当海洋科学博物館で大事に飼育していました。順調に育っていれば、今年渡米する職員と一緒にカリフォルニアの海に里帰りさせることができましたが、飼育設備のトラブルなどで今年に入って全部が死亡してしまいました。 成育できなかった親魚のかわりにと、当博物館の5月のこどもの日の名物、サメやトビウオなどを模した「変わりこいのぼり」の製作を続けている佐藤千太郎さん(印染・コンマツ)の好意でグルリオンのぼりを製作していただき、カブリロ海洋水族館に寄贈していただくことになりました。製作していただいたグルニオンの変わりこいのぼりは、全長約4メートル。本物のグルニオンの特徴である、背はうす緑、からだのわきにシルバーブルーのあでやかなラインがひときわ目を引きます。佐藤さんの変わりこいのぼりは、風を受けると背ビレや尾ビレなどが本物の魚と同じように再現されます。 3月11日(現地時間)の大潮の日、カブリロ海洋水族館の前浜で今年最初のグルニオンの産卵とふ化の特別プログラム「グルニオンに会おう」が開かれ、大勢の参加者で賑わいます。グルニオンの「変わりこいのぼり」が本物のグルニオン同様、カリフォルニアの人たちに親しまれることを願っています。
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