■ 潜水とからだ

スクイーズ
 潜水して深く潜るときに、水圧の増加とともに圧力の差によって起こる障害をスクイーズ(しぼり出し)といいます。体の中やスーツの中などに閉じた空間があると圧力差が生じてスクイーズが起こります。
ボイルの法則と肺破裂
 温度が一定であれば、気体の体積は圧力に反比例します。これがボイルの法則ですが、たとえば水面で1リットルの空気は水深10mで半分の500ml、30mでは1/4の250mlになってしまいます。反対に水深30mで空気をいっぱい吸って息を止めて浮上したとすると、肺の中の空気は水面で4倍にふくれあがることになり、肺は破裂してしまいます。ですから、スクーバ潜水では浮上するときに決して息を止めてはいけません。
水深と潜水時間
 ダイバーは水圧と同じ圧力の空気を吸うので、陸上(1気圧)で100分もつ空気も、水深40m(5気圧)では1/5の20分になってしまいます。
スクーバ潜水のガス
 私たちが地上で吸っている空気の組成は酸素(O2)が21%、窒素(N2)が78%、二酸化炭素(CO2)が0.03%、その他(アルゴン・ヘリウムなど)が1%からなっています。
酸素(O2
 人間には無くてはならない最も重要なガスですが、反面純酸素だけを呼吸していると酸素中毒を引き起こします。
窒素(N2
 圧力に比例して水に溶けやすく、潜水中にダイバーの体内に溶解していき、窒素酔いや減圧症の原因となります。
二酸化炭素(CO2
 人間の呼吸により体内にできます。大気圧の下で2%以上になると中毒症が現れます。
ヘリウム(He)
 大変軽いガスで、空気より減圧時間も少なくてすみ、窒素のような酔いの作用もなく、吸気抵抗も少ないことから、深い海での潜水作業のときなどに利用されます。
混合ガスのダルトンの法則
 混合ガスの圧力はそれを形成しているガス圧の総計です。したがって、地上で吸っている空気の中に2%の炭酸ガスが含まれていても体には大きな影響はありませんが、水深40mで吸うとその5倍の炭酸ガスを吸うことになるので、たいへん危険です。
窒素酔いとマテニーの法則
 窒素を吸っていると水深30mあたりから、酒に酔ったようになります。その症状はそこから10m増すごとにマテニーのカクテルを1杯づつ飲んでいくようにひどくなるので、マテニーの法則と呼ばれています。スポーツダイバーの潜水の限度を30mくらいとするのは、この窒素酔いのためと器具のトラブルがあったとき水面脱出の可能な範囲として決められました。
減圧症とヘンリーの法則
 気体は圧力に比例して液体の中に飽和状態になるまでとけこみます。これをヘンリーの法則といいます。潜水中のダイバーの体の中には窒素ガスがとけこみますが、浮きあがるにつれ窒素ガスは体の外に出されます。しかし急に浮きあがると、よぶんな窒素ガスが 体の中で気泡をつくり、血液を止めたり組織を圧迫したりします。
これを減圧症といいます。減圧症を防ぐには、浮きあがる途中で停止時間をもうけます。この時間を示してある表が減圧表です。
減圧表
(ダイブテーブル)
 減圧症を防止するために、浮上途中での停止時間が必要です。この浮上停止の時間を示す表が減圧表です。日本では労働省の定めたものと米国海軍の標準減圧表が使われていますが、最近では自動減圧計やコンピューターゲージが普及しています。

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最終更新日:1996-07-30(火)
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