■『ふれあいBOX』1997年3-4月号

地球プレイバック 「新生代の仲間たち」10

サハリンのクジラ サハリノケトス

柴 正博

 クジラ目歯クジラ亜目。ロシアのサハリンの新生代中新世(2250万〜500万年前)の地層から頭骨が発掘されている。
 発掘された資料が少ないため、その生態はほとんどわかっていない。
 東海大学自然史博物館には、頭骨(60センチ)が展示されている。

 35億年前、地球にはじめて生命が登場しました。海の中で生まれた生命は、30億年かけて、肺機能など様々な機能を身につけ、陸に上がることができました。以来、せきつい動物は、魚類から両生類、爬虫類、哺乳類と進化していったのです。6500万年前、恐竜をはじめ多くの爬虫類が絶滅し、哺乳類が繁栄する新生代という時代がはじまりました。
 水中を生活の場とした魚類、水辺に住んだ両生類などから進化し手、乾燥した栃でも生きていく能力を身に付けた哺乳類でしたが、その時代に再び水中生活に戻った哺乳類がいます。それはクジラの仲間です。
 現生のクジラは、効率のよい呼吸をしているため1時間以上連続して水中に潜ることができるものや、水深1000メートルまで潜ることが観察されたマッコウクジラの例もあります。このように水中生活に適応したクジラの仲間の祖先が、陸の生物であったと思われる証拠がいくつかあります。パキスタンの新生代始新世前期(5400万年前)の地層からは、最古のクジラと考えられているバキケトゥスの頭骨が見つかっています。全長は1.8メートル程と考えられ、周辺に川の流域に生息した動物の化石がみつかっていることから、川の周辺で生活し、外洋には出なかったのではないかと考えられます。
 また、エジプトの始新世後期(4000万年前)の地層から豊富に発掘されているバシロサウルスは、全長20メートル以上もあり、3本の指が認められる後ろ足が発見されています。
 これらは、古クジラ類に分類され、鼻孔が頭部の前方にあること(現生のものは水面で呼吸しやすいように鼻孔は頭頂部にある)などからも、陸から海へと移行する過程にあったものと思われます。
 始新世後期から漸新世前期(4000万〜3500万年前)になると古クジラ類にかわって、歯クジラ類、髭クジラ類が登場します。中新世(2000万年前)以降、多くの種類のクジラが分化し、その化石が各地で発見されています。サハリノケトスは、ロシア・サハリンで発見されたもので、詳細はよくわかっていません。


『ふれあいBOX』1997年3-4月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1997-04-01(火)
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