■『ふれあいBOX』1996年11-12月号

地球プレイバック 「新生代の仲間たち」8

皮下脂肪たっぶり マンモス

柴 正博

 長鼻目ゾウ科。マンムートゥス・プリミゲニウス。
 一般にいうマンモスのことで、ケ(毛)マンモス、ケナガ(毛長)マンモスともいう。体長3.9メートル、肩高2.9メートル、体重6トン。更新世の後半(25万年〜1万年前)にユーラシアから北アメリカに生息。日本では北海道から臼歯が発見されている。
 東海大学自然史博物館には、臼歯のついた下顎骨と肩甲骨、臼歯、毛が展示してある。

 有史以前に絶滅してした動物の中で、マンモスほど一般に知られ、また研究の進んでいる動物もいないでしょう。
 シベリアの凍土層から発掘された「ディーマ」と名づけられた幼いマンモスは4万年前に死んだとは思えないほど完全な姿で発掘され、貴重な研究資料を提供しています。また、最近は、マンモスからDNAを取り出すことによって、進化の過程が解明されつつあります。
 一口にマンモスといいますが、牙が巨大で体毛が長く、頭がドーム状に高いいわゆるマンモスは、ケナガマンモスのことをいいます。長い体毛を持ち厚い皮下脂肪をたくわえていたとなると、マンモスは氷や雪に閉ざされた地に生きていたのだろうというイメージがあるかもしれませんが、そうでもありません。たとえば最終氷期のピーク(1万8000年前)には、スカンジナビア半島から北アメリカの五大湖あたりまでは氷に閉ざされていて、マンモスもすんでいません。
 シベリアやアラスカに住んでいたマンモスは、夏にはツンドラや草原の草をはみ、冬には潅木の葉や皮を食べていました。その証拠にマンモスの胃からは、イネ科を中心に、スゲ、ヤナギ、カラマツなどの多種類の植物が発見されています。
 後期旧石器時代(8〜1万年前)の人類は、マンモスを狩猟の対象としていたらしく、彫刻がほどこされたマンモスの牙やマンモスの壁画が多数発見されているほか、巨大な牙や頭顎骨、毛皮を利用した人間の住居の遺跡も発見されています。
 マンモスは今から約一万年前に、多くの大型哺乳類とともに絶滅しました。その主な原因は、氷河期が終わって環境が変わったためだと考えられています。温暖になれば過ごしやすくなるのでは、と思いますが、植生が変化して森が増えたため食用としていた植物が得にくくなったのです。
 また、人類による狩猟が滅亡を助長したともいえます。
 現代でも国際間の取り引きが禁止されているアフリカゾウなどの象牙に代わるものとして、マンモスの牙が掘り出されています。



『ふれあいBOX』1996年11-12月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1997-04-01(火)
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