■『ふれあいBOX』1996年7-8月号

地球プレイバック 「新生代の仲間たち」5

角のない恐角類 モンゴリテリウム

柴 正博

哺乳綱恐角目プロディノセラス科。始新世前期のユーラシアに生息。
東海大学自然史博物館には、モンゴリテリウムの頭顎骨(約40センチ)が展示されている。

 今から6500万年前、それまで繁栄を誇っていた恐竜が絶滅すると、恐竜の陰でひっそり生きていた哺乳類がさまざまに発展していきました。新生代始新世(5500万〜3600万年前)の時代、地球の多くの地域は熱帯性の気候で、シベリヤやアラスカあたりでも温帯性の森林が広がっていました。
 この時代に、ウマの祖先ヒラコテリウムや地上最大の哺乳類バルキテリウム、海には古代クジラのパキケトゥスなど多くの種類の哺乳類が登場しました。中でも異彩を放つのは、北アメリカに生息していたウインタテリウムという動物です。この動物は体長3.3メートル、肩までの高さが1.5メートルで、現生のサイくらいの大きさでした。頭に三対の角状の突起とサーベルのような長い犬歯をもっていて、一見恐ろしい外見ですが、攻撃をするための武器としてではなく、身を守るために用いられたと考えられています。おそらく水辺近くにすみ、やわらかい植物を食べていたおとなしい動物だったのでしょう。
 恐角類の仲間に属し、その祖先を辿ると、モンゴルのゴビで発見されたモンゴロテリウムに行き当たります。モンゴロテリウムは、新生代始新世前期(5000万年前)に生息した恐角類の仲間です。胴が長く、足が短い体長1メートルほどの動物で、「恐角類」というものの、角は目立たちませんが、サーベルのように長い上顎の犬歯をもっていました。指の骨の配列は現生のカバやゾウに似ていますが、前足は五本の指の発達がよく、つま先だちで歩いていました。
 恐角類の化石は新生代の暁新世おわり(6000万年ころ)から始新世おわり(3600万年前)までの時代の地層から発見されます。北アメリカのものはアジアにすんでいたものが始新世はじめに移住し、環境に適応して、いろいろな種類に発展したと考えられています。この恐角類をはじめ汎歯類、裂歯類など新生代はじめに生息した哺乳類は、あとの時代に現れて発展した奇蹄類や偶蹄類にその生活の場を追われ、新生代の中ごろに絶滅してしまいました。


『ふれあいBOX』1996年7-8月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-08-31(土)
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