■『ふれあいBOX』1996年6月号

地球プレイバック 「新生代の仲間たち」4

鋤のような下アゴを持つ キロテリウム

柴 正博

キロテリウム:哺乳類奇蹄目サイ科。中新世から鮮新世のユーラシアに生息。
東海大学自然史博物館には、キロテリウムの頭顎骨(60cm)が展示されている。

 サイの仲間は、新生代第三期のはじめ(3000万年前頃)に全盛を迎えました。その時に繁栄していたのは陸上に棲む哺乳類で最大といわれるインドリコテリウム(バルキテリウム)というサイです。このサイは、コーカサスからインド、中国にわたって分布し、肩までの高さが5.4メートル、体重は30トンありました。現生の陸上哺乳類では最大のアフリカゾウと比べると、4倍以上の体重でした。首が長い上に、頭部だけでも1.3メートルあったため、8メートル以上の高さの木の葉を食べることができました。現生のキリンでも頭頂部まで5.7メートルほどですから、いかに大きかっかたがわかります。

 サイの仲間は奇蹄目に分類されますが、それは奇数(三本)の指が蹄である動物ということです。

 もともとは葉食(木の葉などを食べる)でしたが、第三期後半の中新世(2000万年前)になると、草原が広がったことと、偶蹄類(ウシやシカ)の進出によって生活の場が変化したために、草原に暮らし草を食べるサイが登場しました。

 その中の一つにキロテリウムがいます。キロテリウムは中新世終わりから鮮新世(1000万〜200万年前)にかけてユーラシアの草原に暮らしたサイです。下アゴの切歯が大きく前に突き出しているのが特徴で、地中の植物を掘り起こして食べていたのではないかと考えられています。

 キロテリウムは、角という武器を持たず、そのかわりに敵から逃れるくらい速く走ることができたと考えられています。

 日本列島にも生息し、岐阜県の瑞浪市の中新世の地層からキロテリウムの化石が発見されています。

 現生のサイは、四種類(インドサイ・クロサイ・スマトラサイ・シロサイ)で潅木や葉、果実を食べる葉食性のものと、草を食べる草食性のものがいます。夜行性で、森林の湿地や水辺を好み、目がよくないかわりに嗅覚と聴覚が発達しています。重々しい体格にも関らず、駆け出すと意外に速く走ることができます。

 最近は、漢方薬やアラブの短剣の柄の材料となる角を取るための密猟や生息地の開発によって、絶滅が心配されています。



『ふれあいBOX』1996年6月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-08-31(日)
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