■『ふれあいBOX』1996年5月号

地球プレイバック 「新生代の仲間たち」3

速く走るためのスタイルを持った ヒッパリオン

柴 正博

 哺乳綱奇蹄目ウマ科。中新世後期から更新世に生息し、特に鮮新世に繁栄した。
 北アメリカからヨーロッパ、アジア、アフリカに生息。肩までの高さ1.4メートル。
 東海大学自然史博物館には、頭骨が展示されている。(同館には、4種類のウマの足の骨が古い順に展示され、ウマの進化がわかるようになっている。)

 ウマの先祖をたどると、始新世(今から5000万年前)の時代、北アメリカやアジア、ヨーロッパにいたヒラコテリウム(エオヒップス)という動物にいきあたります。キツネくらいの大きさで、足の指は前が四本で後が三本でした。そして現生のウマが草を食べるのに対し、ヒラコテリウムは森や林の中で木の葉を食べていました。
 漸新世(3500万年前)頃、アジアやヨーロッパにいたヒラコテリウムは絶滅し、北アメリカの子孫が発展していきました。
 時代がたって中新世(2000万年前?)には、大陸に隆起運動が起こり、そのために広大な草原ができました。この環境に適応して進化した動物の一つが、ウマの仲間(パラヒップス、メリキップスなど)でした。この仲間は広い草原ですばやく逃げられるように、長い足と強い脚力を獲得しました。また、木の葉にかわって草を食べるのに適したような歯の構造になりました。
 その後、特に鮮新世(500万〜200万年前)い栄えたヒッパリオンは、北アメリカだけでなく、ヨーロッパやアジア、アフリカにも分布しました。体の大きさは現在のウマとほぼ同じくらいで、足が長く、現在のウマより足が早かったようです。足の指は三本ありましたが、中央の一本が大きくて横にある二本の指は小さく、一本指で歩いたり走っていました。また、草をすりつぶすための歯もこの時代の他のウマの仲間よりも発達していましたが、ヒッパリオンは、更新世の終わりに絶滅してしまいました。
 現在のウマ(エクウス属)は、400万年前、プリオヒップスという一本指のウマから進化し北アメリカから世界に広がったもので、足の指がさらに進化しついに指の爪、つまり蹄で走るようになりました。現在、この仲間には野生や家畜のウマのほか、シマウマ、ロバなどがいます。エウクス属は、8000年前、南北アメリカでは絶滅してしまいました。ですからアメリカの西部劇に登場するウマは、人間が後に移植したものなのです。  ウマは、古くから労働力、あるいは食用として人間と深い関わりをもってきました。そのことで、絶滅せずに現在でも繁栄しているともいえる動物です。


『ふれあいBOX』1996年5月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-08-31(土)
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