■『ふれあいBOX』1996年4月号

地球プレイバック 「新生代の仲間たち」2

今日のごちそうはマンモス? スミロドン

柴 正博

 哺乳綱食肉目ネコ科マカイロドゥス亜科。
 更新世後期に北アメリカやアルゼンチンに生息した。全長1.2メートル。
 サーベルタイガー(剣歯トラ)の名前で人気があるが、トラ(大型ネコ類)に近いわけではない。英語ではSaber-toothed cat という。
 東海大学自然史博物館には頭顎骨が展示してある。

 アメリカのカリフォルニア州ランチョ・ラ・ブレアでは、更新世の時代(今から約100万年前)のタールの地層からたくさんの動物の化石が発見されました。その中に大きな犬歯をもつ剣歯ネコ、スミロドンの化石も含まれていました。
 当時この地域には湖があり、そこにいろいろな動物たちが水を飲みにきて、地面の下にやわらかいタールがたまっているのに気がつかず、そこにはまってしまったと考えられています。剣歯ネコなどの肉食動物も、タールの沼でもがいている動物を食べにきて自分もわなにはまったとも言われます。
 現在のネコの仲間には、チータやヒョウ、ライオンやトラなどがいます。ネコの進化系統には、活動的で敏捷な補食者として進化した系統と、あまり俊敏でない大型の剣歯ネコとして発展したものがあります。
 剣歯ネコの仲間には、上顎の犬歯が短剣のように巨大化して、下顎の骨には口を閉じたときに下向きの剣を後ろから支えて保護するツバ状の突起が出ていました。
 スミロドンはこの剣歯ネコの仲間の中で最後に現れた最も大きな動物です。現在のライオンと同じくらいの大きさで、上の犬歯は20ほどありました。その上顎を下顎が邪魔をしないように、下顎が上顎に対して90度以上開くような構造になっています。そして、獲物を襲うときには、巨大な首の力と肩や胸の重みを利用して、短剣のような犬歯で攻撃をかけ、その一撃で急所に深手を与えて狩りをしたと考えられています。
 スミロドンは、マンモスやバイソンなどの厚い皮膚をもった大型の動物に襲いかかったと思われ、特に子供のゾウがその標的にされたと思われます。氷河時代も終わりに近づくと、剣歯ネコの獲物だった大型の動物が次々と絶滅してしまい、ついに剣歯ネコ類も運命をともにしていきました。


『ふれあいBOX』1996年4月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1997-04-01(火)
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