恐竜が陸地で繁栄を誇っていた中生代、海ではアンモナイトが繁栄を極めていました。アンモナイトは古生代デボン紀はじめ(4億年前)から生息していましたが、中生代の終わり(6500万年前)に恐竜とともに絶滅しました。
アンモナイトは、イカやタコと同じ「軟体動物頭足綱」に属していて、現生のものでいうとオウムガイのような姿をしています。ジュラ紀の地層に残されたアンモナイトの足のすり跡から10本くらい腕があったと考えられています。普通は平面上にうずを巻いたような殻をもっています。そして、オウムガイと同じように殻の中の部屋にガスをためて、その圧力を調整して海水中で浮きながら泳いだり、時にはイカと同じようにガスを噴射して勢いよく動いたと考えられています。
アンモナイトの殻の中の部屋と部屋の間の壁は、オウムガイのように単純ではなくて、とても複雑に入りくんでいます。殻の中の部屋の壁と外側の殻とが交わった線、すなわち「縫合線」と呼ばれるものは、とても複雑な曲線の模様をつくります。この模様が菊の花模様に似ていることから、日本ではアンモナイトのことを、古くから「菊石」と呼んでいました。縫合線は、殻の中のアンモナイトの体(軟体部)の形と関係していて、種類によってそれぞれ決まっているため、この線はアンモナイトの種類を区別するのにとても役立ってきました。
ひとくちにアンモナイトといっても直径1〜2センチのものから2メートルにも及ぶもの、巻のほどけかかったもの、まっすぐなものなどその種類は1万種類以上にわたっています。このことは、地質時代の決定や生物の進化を調べるために大変役立っています。
「アンモナイト」という名前は、そのとぐろを巻いた蛇のよう化石の形が古代エジプトの太陽神アンモンの角(つの)に似ていたとことから名付けられました。アンモナイトの化石の中にはとても美しいものがあったり、奇妙な形のものがあって、それらは「化石の王様」と呼ばれ多くの人々を魅了しています。
『ふれあいBOX』1996年2月号 (所属・肩書は発行当時のもの)