■『ふれあいBOX』1996年1月号

地球プレイバック 「よみがえる恐竜たち」13

にわとりサイズの肉食恐竜 コンプソグナトス

柴 正博

 恐竜の中でも一番小さいコンプソグナトスは、全長約70センチメートルと現在のニワトリとほぼ同じくらいで、小型の肉食の恐竜です。
 今年、東海大学自然史博物館に展示したコンプソグナトスの標本は、1850年代末にドイツ・バイエルン地方の石版石灰岩から発見されたものの複製です。この石版石灰岩は、ジュラ紀後期の浅い海の堆積物で、ここからは翼竜や植物、昆虫などがきわめて保存の良い状態で発見されています。特に羽根の痕跡まで残っていたために最初の鳥とされた始祖鳥の化石が有名です。
 コンプソグナトスは、その始祖鳥の骨格の構造と非常によく似ていたために、誤解されることもありました。当時、トーマス・ハクスレー(ダーウィンを支持した進化論者)はそれらの化石を見て「鳥は恐竜の子孫である。」という強い印象をもったと言われています。恐竜と鳥との関係は現在も論争が絶えない興味深い話題です。
  コンプソグナトスは、尾と足が長く、前肢がたいへん短い二足歩行の足の早そうな肉食恐竜です。その前肢には2本の指には鋭い爪があり、また頭骨や歯の形から、昆虫など自分より小さな小動物を餌としていたと考えられます。そして、化石の胃にあたる部分から小さなトカゲの骨が発見されたことから、すばやく動くトカゲを餌にするほど敏捷に動いた恐竜であったということが想像されています。
 コンプソグナトスの化石は、頭と首を背中の方に弓なりにそらして横たわっていてます。これは、首の長い動物が「死後硬直」のために、首の筋肉と靭帯が収縮して起こるとされています。
 コンプソグナトスの生息したジュラ紀後期は、カメやトカゲなどから全長30メートル近いバロサウルスなどの大型草食恐竜まで大小さまざまな爬虫類が生息し、その他にも、多様な植物や昆虫、魚竜、原始哺乳類、始祖鳥など豊かな生物が栄えた時代です。  コンプソグナトスは、そういうジュラ紀の世界を軽快に駆け回っていたことでしょう。


『ふれあいBOX』1996年1月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-05-17(金)
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