■『ふれあいBOX』1995年11月号

地球プレイバック 「よみがえる恐竜たち」12

ジュラ紀のイルカ ステノプテリギウス

柴 正博

 ドイツのホルツマーデンの採石場の黒い頁(けつ)岩からは、ウミユリやクラゲなど海にすむ生物の珍しい化石が発見されます。この頁岩は、ジュラ紀のはじめこの付近にあった入り江にたまった泥が固まったものです。ここでの大物といえば、何といっても「魚竜」の化石です。
 ステノプテリギウス、レプトプテリギウス、イクチオサウルスなどの保存のよい化石がたくさん発掘されているため、魚竜の研究に大きく貢献しています。
 例えば、魚竜の成体のおなかの部分に胎児が入っているステノプテリギウスの化石が出ていることから、魚竜は、胎内で孵化して、胎児は母体から生まれたということがわかりました。
 魚竜の四肢の骨は短くなって鰭にかわり、胴の後端には魚の尾鰭とよく似たものがあります。
 また、背には背鰭のような大きな三角形の肉質の突起があります。魚竜には首がほとんどなく、長い尾をもち、尾は途中で折れ曲がったようになって尾鰭を強く動かすことができる構造をしています。このように魚竜は水中をすばやく泳ぐ動物として最適な形をしています。
 頭とあごの骨は、イルカのように口の部分が細長く突き出し、そこにはたくさんの鋭い歯があります。その歯のエナメル質には、迷路状の筋が見られます。この特徴は、魚竜の祖先と考えられる両生類や原始的な爬虫類の歯の特徴と同じです。
 魚竜(爬虫類)の体は現在私たちが見る動物としてはイルカ(哺乳類)ととてもよく似ています。このように、生きた地質時代や動物の種類はまったく違うのに、環境や生活の仕方が似ているために、同じような体つきや特徴をそなえるように進化することを「収斂(しゅうれん)進化」と言います。
 世界最古の魚竜の化石(三畳紀前期・2億4500万年前)は、岩手県歌津町で発見されたウタツサウルスです。
 その後魚竜はジュラ紀にたいへん繁栄し、白亜紀中期(1億年前)に絶滅しました。なんと1億年以上も繁栄したのです。


『ふれあいBOX』1995年11月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-05-17(金)
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