南ゴビの西、ゴビ−アルタイ山脈の南にネメゲット盆地があります。ここには中生代白亜紀後期(今から約八〇〇〇万年前)の砂の地層が深い谷の両側に高い崖をつくって出ています。そして、そこからはタルボサウルスやサウロロフスの恐竜の化石がたくさん見つかっています。
サウロロフスの化石骨格がはじめて発見したロシアの探検隊は、巨大な骨がたくさん出てくるのを見て、その場所を「竜の墓」と名づけました。
サウロロフスは、後脚の一つの骨の長さが3mもあり、全体では背の高さが12mにもおよびます。サウロロフスの骨の化石のまわりからは、ウロコでおおわれた皮膚の化石も発見されました。
サウロロフスは、「隆起のあるトカゲ」という意味で、頭に太いトサカのような突起をもっています。その頭と顎の形から、カモハシ竜の代表的な恐竜でもあります。カモハシ竜とは、カモのくちばしのような平らで丸みのある上あごをもつ鳥脚類の恐竜です。この仲間のパラサウロロフスや、コリトサウルス、チンタオサウルスなどたくさんの種類の恐竜の化石がユーラシア大陸と南北アメリカ大陸の白亜紀後期の地層から発見されています。
サウロロフスの顎には親指ほどの歯がぎっしりと並んだ列があり、その歯の列はまるで刀の刃のような面をつくっています。そしてその下には新しい歯が何列も用意されています。この歯を見ただけでも、サウロロフスが歯のすり減りや折れることを気にせず、硬い種子や葉それに小枝などをバリバリと食べていたことが想像できます。木の上の葉や実を食べるときには後脚で立ち上がり、ふくらました頬の中にはたくさんの食べ物を貯めておくことができたことでしょう。
カモハシ恐竜は、トゲのついた尾や角など攻撃的な防御の仕組みをもっていませんが、そのかわり目と耳と鼻がよくて、後脚が強くて逃げ足が速かったと思われます。カモハシ恐竜の前脚の指には水かきがついています。ひょっとすると平たい尾を振って、前脚で水をかく、泳ぎのうまい恐竜だったかもしれません。
『ふれあいBOX』1995年2月号 (所属・肩書は発行当時のもの)