■『ふれあいBOX』1994年11月号

地球プレイバック 「よみがえる恐竜たち」4

恐竜時代の空を飛んだ アンハングエラ

柴 正博

 ブラジル東部にセアラ州アラリペというところがあります。
 ここの地層の中には化石を含むたまたま固まったノジュールと呼ばれる石の塊があります。この中から白亜紀の魚の化石のほかに翼竜の化石が発見されることがあります。
 自然史博物館の恐竜ホールの空中には、翼竜アンハングエラの全身骨格標本が、恐竜骨格標本を見おろしながら滑空する姿勢で、展示されています。これは、アラリペの白亜紀の地層から発見された標本のレプリカ(複製模型)です。
 アンハングエラという名前は、この地方の原住民の言葉で「年老いた悪魔」という意味で、その発見はつい10年ほど前のことです。
 翼竜は、空を飛ぶことのできる爬虫類で、中生代三畳紀のおわりから白亜紀のおわりまでいろいろな種類がいました。
 アンハングエラの口には尖った歯があり、その特徴から、魚を捕って食べていたと考えられています。
 また細長いくちばしの上下のあごには、トサカのような平たいでっぱりがあります。それはおそらく、水面すれすれに飛びながらくちばしを水中に突っ込んだ時に、このでっぱりが船のキール(竜骨)のように水の抵抗をおさえ、頭骨の動きを安定させる働きがあったと考えられています。
 翼竜の腕をよく見ると、腕の途中に尖った爪をもつ3つの指がついているように見えます。それの外側の腕のように長い部分は、実は異常に伸びた第4指なのです。そして、この骨だけで翼竜の飛膜は支えられています。
 空を飛ぶ翼竜は、骨や肺のつくりが、鳥と似ていますが、鳥は翼を腕から指先にかけての骨全体で支えていて、さらに翼をはばたかせるための強い胸筋をもっています。しかし、翼竜は、飛膜を支えるしくみや胸筋が鳥のように強くないため、ふだんはグライダーのように飛行していたと考えられています。
 翼竜の足首は、直角に曲げることができます。そのことから鳥のように爪先立ちで歩くのではなく、足の裏を地面につけて歩いたと考えられています。
 また、骨盤に足の骨(大腿骨)が垂直につかないために、鳥のような2足で地上を歩くことができず、翼にある指も足の代用にして四足で歩いていたと考えられています。


『ふれあいBOX』1994年11月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-05-17(金)
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