■『ふれあいBOX』1994年10月号

地球プレイバック 「よみがえる恐竜たち」3

エリ飾りがかわいい  プロトケラトプス

柴 正博

 プロトケラトプスは、大型犬ほどの大きさの角竜の仲間で、トリケラトプスなどのような大きな角竜の先祖と考えられています。そのために、名前もプロト(以前の)、角竜(ケラトプス)という意味でつけられています。
 この恐竜の化石は、一九二〇年代にアメリカ自然史博物館が行ったゴビ砂漠探検の時にはじめて発見されれました。この時の発見では、ある限られたところから、赤ちゃんの骨格から年老いたものまでたくさんの化石が発見され、さらに卵の化石、その卵が置かれた巣の跡まで発見されました。
 巣の跡には、細長い楕円形の卵が2つづつ並んで産み落とされ、それらが輪をつくって、さらに重なって、全部で20個以上もありました。こんな小さな恐竜が1個体でこれだけ多くの卵を産んだのでしょうか。
 プロトケラトプスの化石が巣の跡とともにたくさん掘り出されたことから、この場所はプロトケラトプスは集団営巣地で、かれらは集団で活動をしていたと考られるようになりました。ひとつの巣にたくさんの卵が産みつけられているのも、いくつかの個体が共同で巣をつくった可能性もあります。
 プロトケラトプスの頭骨の特徴は、オウムのようなくちばしと頭の後ろにひろがるエリ飾りがあることです。
 このエリ飾りのひとつの役割は、アゴの筋肉を固定するためです。エリ飾りの面積が広いことは、アゴの筋肉が大変強かったことを意味します。また、プロトケラトプスの歯は、植物の繊維を断ち切るのに適した形をしていて、かみくだくのではなくて、植物を短く切るように食べていたと考えられています。
 プロトケラトプスなどの角竜類が最初に出現した時期は、花をつける植物(顕花植物)が現れた時期と一致します。すなわち、植物の変化にあわせてそれを食べる新たな恐竜が出現し、その植物の発展とともにそれを食べる恐竜も発展したと考えられています。
 エリ飾りは、筋肉を固定する役割だけではなく、むしろ雌雄の別や視覚的なディスプレーにも用いられたようです。つまり、エリ飾りが大きければ大きいほどその集団の中で強くて優勢だったのではないでしょうか。



『ふれあいBOX』1994年10月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-05-17(金)
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