■『ふれあいBOX』1994年7月号

地球プレイバック 「よみがえる恐竜たち」1

シッポをあげた ディプロドクス

柴 正博

 ディプロドクスは、頭の先から尾っぽの先まで28mもある恐竜です。このように、首と尾の長い4本足で歩く巨大な恐竜は、竜脚類とよばれる恐竜の仲間で、ジュラ紀後半から白亜紀前半(1億7000万〜1億年前)に栄えました。ディプロドクスのほかに、アパトサウルス(以前は雷竜ブロントサウルスとよばれていた恐竜)や頭を上げると高さが12mにもなるプラキオサウルスなど、いろいろな種類の巨大な恐竜が今までに発見されています。
 ディプロドクスは、今から100年ほど前(1877年)にアメリカのコロラド州キャニオン・シティ近くの牧場で、後肢の一部とたくさんの尾の骨がはじめて発見されました。尾の骨に並行して突き出した「へ」の字型の骨があり、尾が2本の骨からなるように見えることから、「2つの梁(はり)」という意味で、ディプロドクスという名前がつけられました。
東海大学自然史博物館のディプロドクスのシッポは高く上がっています。今までのディプロドクスなど竜脚類の復元では一般にシッポはたれ下がっていました。最近のディプロドクスの研究で、背骨の筋肉が非常に重いものを持ち上げられる構造になっていて、シッポを上げていたことがわかってきたのです。確かに今まで発見された竜脚類の足跡の化石にもシッポを引きずった跡は見られませんでした。アロサウルスのような肉食恐竜が近づいてきた時など、ディプロドクスはきっと長いシッポをムチのよう振り回して身を守ったことでしょう。
 自然史博物館の2階からは、ディプロドクスの頭の部分がよく見えます。よく見ると、頭の上に大きなへこみがあります。これは、実は鼻の孔です。口の上にも目の下にも鼻の孔はなくて、何で目の上の頭のところに鼻があるのでしょう。いろいろなことが想像できます。たとえば、鼻が頭の上にあると、水辺の植物を食べるのに鼻を水面から出して頭を上げずに食べつづられるので便利です。もしかしたら、ディプロドクスはシッポを振り上げて敵を警戒しながら、首を下げて水辺の植物を食べていたかもしれません。


『ふれあいBOX』1994年7月号 (所属・肩書は発行当時のもの)
  しば まさひろ:学芸文化室博物課

最終更新日:1996-05-17(金)
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