2008年11月22日海洋環境士セミナー
「内湾の環境問題とその修復方法」



海洋環境士セミナー講師紹介
講師

鈴木 輝明 氏

所属

愛知県水産試験場場長


概要

 内湾とは、栄養源が豊富で生物の育成に最適な非常に豊かな海である。 愛知県水産試験場では、三河湾を対象として、本来豊かなこの海を脅かす 赤潮・貧酸素・苦潮の原因を長年にわたり調査し、この原因が1970〜 1980年の間実施された大規模な埋め立てによる干潟の消失によるもの であることを明らかにした。
 三河湾の赤潮被害は1980年頃から多発し、これに対して環境省は、 陸路からの汚水による過剰な栄養塩類(窒素、リン)の総量を規制する政 策を実施し、流入負荷を削減して環境改善を試みた。しかし自治体の4割 近くが環境基準を達成しているにも拘らず沿岸環境は改善されていない。 環境基準により減少したのは豊かな海を育てるのに必要な溶存無機態窒素 であり、環境浄化に不要でかつ貧酸素の要因となる懸濁態窒素は増加して いた。このような流入負荷削減に意味はあるのか。政策に対する大きな疑 問である。
 三河湾の埋め立てにより、水質浄化機能を持つアサリなどが生存不能にな り、海水のろ過機能が大幅に減少。10年という短期間で湾内が汚染され てしまった。 干潟域の水質浄化機能・浮遊幼生供給の損失が赤潮・貧酸素の原因である。 したがって、環境改善のため、沿岸域の修復が必然である。
 H10〜16に実施された干潟や浅瀬の造成により様々な魚貝類が戻って きた。しかし、人工的に造った埋立地には課題が山積みである。 造成に必要な砂の確保も今後の課題となっている。 生物が生息できる場を取り戻し、豊かな海の再生を皆で考えよう!


Q&A


・ダムの砂を湾内のどこに入れたのですか?
ダムからの輸送を前提に、経路である一色漁港の周辺に利用した。


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