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2004年度
第一回目
5月18日(火)
  笠原 実さん(海洋科学科 M2)
  人工衛星を用いた海上風格子データセットの作成とその精度検証

 黒潮を始めとする表層海流は、大気から海面に与えられる運動量により駆動されており、海上風による海面応力は、風成海洋大循環理論において重要な物理量です。海上風観測には幾つかの方法があります。船舶観測は、歴史が古く長期間のデータを有しますが、航路に依存をします。また係留ブイは、定点観測という利点はあるものの、観測海域が限られその数も少ないです。そのため、これら従来の観測方法では、海洋大循環を理解するのに十分なデータ密度とは言えません。一方、1990年代初頭から実用化された人工衛星観測は、短時間で広範囲を観測可能であり、全球海洋上での海上風観測を実現しました。私たち海洋科学科・轡田研究室では、人工衛星データを基に海上風(海面応力)格子データセットの作成・配信をしています。本研究はその一部として、格子データの作成方法の検証、及び精度検証などに取り組んでいます。

第二回目
6月1日(火)
  長津 安洋さん (海洋土木工学科 M2)
  浮遊式防波堤の消波特性及び送水特性に関する実験的研究

 現在の地球環境において,現状のまま化石燃料を消費した場合,大気中のCO2濃度の上昇により,陸上に住む多数の動植物が絶滅することが危惧されています。(Nature) そこで,本研究では化石燃料に変わる新エネルギーとして駆動源を地球環境に負荷のかからない自然エネルギーである波浪に着目しました。しかし,海洋エネルギーの賦存量は膨大であるが密度が薄いため実用に到るためには,工学的に解決しなければならない問題が山積みである。本研究で開発した浮遊式防波堤は消波を兼ねた発電の基礎的研究として海洋開発の促進及び環境問題の改善に役立てられるはずである。

第三回目
6月15日(火)
  金ヶ江 梓乃祐さん (地球環境工学科 M2)
  アルゴフロートデータを用いた北太平洋中緯度域における混合層の季節変動に関する研究

 2000年より開始されたアルゴ計画により、投入目標数(3000本)の約42%のアルゴフロートが現在までに全世界の海洋に投入されおり、目標数に達すれば全世界の海洋の状況を詳細に把握できるようになる。
 海洋混合層は海洋表層の境界層であり、大気や海洋を含む気候システム全体の変動を理解するための重要な要素である。よって、アルゴフロートデータを用いて海洋混合層について有益な情報が得られると考えられる。

第四回目
7月6日(火)
  横山 心一郎さん (海洋資源学科 M1)
  航空レーザー測量(ALMAPS)を用いた海岸浸食調査

 海岸浸食が続く静岡県三保海岸において海岸地形の高密度な数値情報を2003年4月および9月に航空レーザー測量(以下LS)によって取得し、同時期に実施した水準測量との比較によって砂浜海岸でのLSの精度と有用性を検証した。三保海岸には養浜や浜崖が存在する。従って調査区域を浜崖の影響を受けない平坦面と傾斜面に分類した。LSには一様な水平位置誤差があることがわかり、その誤差を調整し標高差を算出したところ、平坦面と傾斜面での差はなく、4月と9月の標高差はそれぞれ11cmと4cmであった。この標高差がLSのそれぞれの計測誤差である。本研究では、LSを利用した海岸浸食問題への取り組みを紹介する。

第五回目
10月19日(火)
  中本加奈さん (地球環境工学科 M1)
  Webを用いた地形図作成システムの開発

 地理情報を扱う場合、地図情報はその基本となるものである。従来、コンピュータで地形図を作成する場合、通常数値データ及び地形図作成プログラムを用いるが、大量の数値データの扱いと、地形図作成に関する知識が必要であり、容易でない場合が少なくない。
 そこで本研究では公開された数値地図データを用いて地形図作成システムの構築を検討した。その結果、日本及び沿岸域について2D、3Dの地形図作成を行うことが出来たことを紹介する。

第六回目
11月16日(火)
  岡田裕樹さん (水産学科増殖課程M1)
  九州・沖縄沿岸域におけるホルムアルデヒドの評価

 昨年、九州地方で養殖魚に対するホルムアルデヒドの不正使用が発覚した。本物質の魚体に対する影響は調査されてきたが、海洋投棄による環境への影響についての報告は少ない。そこで環境への影響を調査するにあたり、海水中の本物質の定量を試みた。定量法には数種が知られているがそれらを改良し、海水においても使用可能な簡易的定量法の開発を試みた。また海洋での消失要因について「生物的消失」と「化学的消失」という観点から実験を行った。

第七回目(特別講演)
12月7日(火)
  勝間田高明先生 (海洋物理専攻)
  駿河湾の流れ

 駿河湾は,本州南岸に位置する開放性の湾で日本で最も深い.駿河湾の流動は,黒潮の影響を強く受け,黒潮流軸が接近すると黒潮系の外洋水が流入することが知られている.しかしながら,駿河湾への外洋水の流入過程に於いて,流入の鉛直構造および時間変動に関する知見は少ない.
 そこで,黒潮流路が典型的大蛇行流路(A型)時に,駿河湾口東部の水深650 mの地点に置いて,ADCP(音響のドップラー効果を用いた多層流速計)を用いて300 m以浅の係留観測を行った.このデータに黒潮流 軸位置,人工衛星NOAAの熱赤外画像,湾内および沖合の島々の水位データを加え解析を行った.
 その結果,駿河湾口東部海域の流動の卓越周期は26日周期で,観測最上層の30 mから最下層の220 mまでの全層同位相の順圧的鉛直構造を持っている.この26日周期の外洋水流入は,駿河湾沖合の八丈島,三宅島,神津島,湾内の田子の順に伝播する水位変動と対応が良かった.すなわち沖合から水位上昇が駿河湾内まで伝播すると,駿河湾の流動は流入を示す.この水位擾乱は黒潮前線波動に起因することが判明した.

第八回目
12月21日(火)
  木村圭佑さん (海洋工学専攻M2)
  リモートセンシングを用いた亜南極前線周辺におけるイワシクジラと海洋パラメータとの関係

 ヒゲ鯨の一種であるイワシクジラは、他の大型鯨類と同様に、冬は低緯度(赤道寄り)、夏は高緯度(極寄り)で摂餌をするといった非常に大規模な回遊を行います。このように高い遊泳能力を持つ鯨類の調査には広域的かつ持続的な観測が必要不可欠であり、今まで行われてきた船舶による観測だけでは限界があります。そこで、広く、連続して海洋の状態を観測できる人工衛星を利用して、イワシクジラがどのような海況を好み分布しているのかを明らかにするのが本研究の目的です。本研究では、南極海鯨類捕獲調査(JARPA)における中低緯度目視調査によって得られたイワシクジラ発見情報に基づいて東部インド洋海域、西部南太平洋海域を対象とし、様々なパラメータを用いた解析を行っています。調査海域に対し、解析を行った結果、東部インド洋海域は西部南太平洋海域と比べ、深度及び水温勾配の影響が強いことが示唆されました。このような統計結果の違いは、亜南極前線周辺の海流や海底地形による影響であることが考えられます。