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2003年度
第一回目
5月20日(火)
  前原智子さん(海洋科学科M2)
  枯草菌ゲノムDNAの機能解析

 枯草菌は納豆菌の類縁菌で、1997年には全ゲノムの塩基配列が決定しており、大腸菌と共に基礎的・応用的な分子生物学の研究対象とされています。しかし約半数の遺伝子の機能が不明です。私達はこの枯草菌DNAを研究材料として用いており、その未知遺伝子の機能を探る研究を行っています。ほんの一例をあげると、枯草菌が栄養枯渇時に生産するプロテアーゼというタンパク質分解酵素は洗剤に用いられていますが、このプロテアーゼを生産するために枯草菌内のどの遺伝子がどのように働くのか、枯草菌の中ではどのようなことがおこっているのか、等といったことを調べています。
 今回は枯草菌とはどのような菌か、また実際にどのような実験を行っているのかといったことについても話していきたいと思っています。

第二回目
6月3日(火)
  井上りえこさん(地球環境工学科M2)
  地球温暖化と海洋の役割 -海水中CO2濃度-

 海洋は、気候変動に直接関係していると言われていますが、環境問題の一つでもある地球温暖化に対しては、その役割は未だに多くの不明な点があります。人類が化石燃料を消費し大気中に放出した二酸化炭素(CO2)は、海表面を通して海水中に反映され、海水中では植物プランクトンの光合成によるCO2消費と炭素固定、深層への貯蔵などの複雑な循環が行われています。
 私達の研究室では未だに解決されていない大気−海洋間のCO2輸送についてざまざまな分野からアプローチし、大気中のCO2がどのように海水中に溶け込んでいるか、定量的な推定を試みています。これは、大気中の二酸化炭素(CO2)の行方と海洋の役割を解明することとなり、地球温暖化防止策へ直接的に貢献できるものと思われます。

第三回目
6月17日(火)
  佐野守くん(海洋資源学科M2)
  海底地形・海底地質について

 海底地形と一言で言いあらわしても、私たちは普段の生活の中で海底地形を目にすることはできません。そこで、今回は音波探査という手法を用いて得られたデータなどから、海底地形、海底地質がどのような形状をしめしているのかを、私が研究している伊豆半島南西沖に位置する銭州海峰を中心にして紹介したいと思います。

第四回目
7月1日(火)
  渡邉晋也くん(海洋土木工学科M1)
  国土を守れ!マーシャル諸島共和国での海岸侵食対策

 マーシャル諸島共和国は平均海抜2〜3mです。この土地は昔から現在にいたってサンゴが造ってきた土地です。したがって山もなければ川もない。有るのは広大な海とサンゴが造った狭い土地だけです。いま、この国は海岸侵食と言う大きな問題を抱えています。この問題は世界各国で問題になっていますが、マーシャル諸島共和国にとっては死活問題です。私の研究テーマとして海洋土木がどのようにこの問題に立ち向かっていくかをコンクリート分野からの視点で常に戦っています。

第五回目
10月7日(火)
  護摩堂雅子さん(海洋資源学科M2)
  熱流量から推定した水曜海山カルデラ熱水地帯の熱水循環

 伊豆・小笠原弧の孀婦岩と西之島の間には、七曜海山列と呼ばれる海底火山群があり、その中に、活発に熱水活動を起こしている水曜海山があります。カルデラ底(水深1390m)は200m四方に拡がっており、最高温度317℃の熱水を噴出するブラックスモーカーが多数散在しています。 「しんかい2000 」及び 「ドルフィン3K 」による潜水調査で小型熱流量プローブ(SAHF)を用いて水曜海山カルデラ内熱水地帯の熱流量空間分布を測定しました。その後、測定したデータから熱流量を求め、熱流量分布より熱水循環系構造を推定することを行っています。

第六回目
10月21日(火)
  畑中佐知子さん(水産学科・増殖課程M1)
  アサリの育成用配合飼料の開発

 アサリは潮間帯に生息している二枚貝であるとともに重要な水産資源です.しかし,近年においてその資源量が減少しているため,種苗生産施設で育成したアサリ稚貝の需要が高まっています.施設で育成する場合,アサリの餌として植物プランクトンを与えているのですが,その培養,管理には膨大なコストがかかってしまいます.そのため配合飼料の開発が望まれているのです.そこで本研究ではアサリの育成用配合飼料の開発を目的とし,乾燥スピルリナ10%を含んだ配合飼料とそれらの基になる数種の飼料原料をアサリ稚貝に給餌し,殻長の成長を調べました.またアサリ稚貝の育成に適した底質について検討したので報告します.

第七回目
11月18日(火)
  金子純二君(海洋資源学科,研究員)
  静岡・清水地域の完新統研究

 静岡、清水地域は東海地震の被害が甚大とされる地域である。特に軟弱地盤と言われる海成層がその構成に多く含まれる平野地形は人口密集地でもありそのため地震時に人間に直接及ぶ被害は計り知れない。本研究域の軟弱地盤は後氷期の海水準変動に伴い、三保半島や有度丘陵などの複雑な地形、地質の影響を受けながら形成された完新統であり、海水準変動を指標とした有度丘陵や三保半島などの古地理復元、それを踏まえての海域の平野部への広がりから軟弱地盤の分布、構成を認識することが地震被害の軽減対策につながる。また現在まで本研究域は陸域のみ、海域のみの研究報告がほとんどであったが、完新統とは従来大陸棚外縁から、現在の平野部までのウルム最大氷期以後の地層であるから、本研究は陸域においては主にボーリング柱状資料を、海域においては主に音波探査解析記録を使用し統合的に解析を行い、洪積統上面の表現、海域層と陸域層のつながり、三保半島の形成過程、有度丘陵の波蝕時代、軟弱地盤の分布等が明らかにする。

第八回目
12月2日(火)
  岡田聡君(海洋科学科,M2)
  2003年エクアドル観測日記・逃亡日記

 南米エクアドル北部(マハグアール)のマングローブ水域は、世界最高木のマングローブ樹林が繁茂しています。現地では7年前から日本のNGOが主体となり、様々な観測や地域活性に向けたプロジェクト(樹林内観光や宿泊施設の設置)が進んでいます。私はその科学的調査の集大成の任をNGOから委託され、2003年2月末から約3週間、現地での観測とガラパゴス諸島のマングローブ林の視察に向かいました。順調に行っているかと見えたエクアドルでの観測中、私を含む日本人調査団一行は、現地の自然保護団体を名乗る人たちから強烈なシュプレヒコール等を受け、命からがら脱出してきました。その貴重で危険な体験を、是非皆さんに御伝えしたいと思いました。少々茶話会の趣向とは違うかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。(勿論構いません.こちらこそ宜しく☆主催者談)

第九回目
12月16日(火)
  服部友則君(海洋科学科,M1)
  船舶観測データを用いた北半球海面水温場における数十年スケール変動解析

 近年、地球温暖化や異常気象等の環境問題が世界的に重要な関心事となり、その原因や背景について広く議論されている。現在では、大気と海洋とは相互作用する一つの気候システムとして認識されており、こうした地球規模の気候変化の原因を解明する為には、大気・海洋場における数十年以上の時間スケールを持つ変動の実態を理解する事が重要である。特に、海面水温場は下層大気における運動の主要なエネルギー源の一つであり、気候変動を左右する重要な因子と考えられる。
 こうした数十年規模の気候変動を解析する際には、出来るだけ長期に渡る海上気象観測データが必要不可欠である。そこで、本研究では船舶観測データとしてNOAA作成のCOADS、及び神戸海洋気象台により収集された神戸コレクションデータ(KoMMeDS-NF)を用いて、北太平洋並びに北大西洋において大気及び海洋の各要素についてEOF解析を行い、個々の海域における各要素の代表的な変動の空間的・時間的変動の特性を調べた。その結果、海面水温場において北太平洋及び北大西洋両海域に共通する60-80年規模の長期変動が見いだされ、一方北太平洋・北大西洋各海域に固有の変動も確認された。

第十回目(特別講演)
1月6日(火)
  安江正樹先生(理学部物理学科)
  ニュ−トリノ振動現象

 不思議な素粒子ニュートリノの紹介をします。1998年に日本の神岡鉱山地下深くで世界で初めてニュートリノ振動現象が確認されました。ニュートリノは3種類ありますが、その後の観測により、それぞれ振動しながら姿を変えていることが、地球大気内で作られたニュートリノや太陽の核融合で作られたニュートリノからわかりました。これらの現象をわかり易く説明し、最先端の理論的な説明方法を解説します。